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大学病院におけるうつ病治療1

2014.02.04   帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科科長・教授 張 賢徳

帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科科長・教授 張 賢徳氏
1991年 東京大学医学部医学科卒業後、帝京大学医学部精神科学教室入局。1997年 英国ケンブリッジ大学精神医学博士号取得。同年、帝京大学医学部附属市原病院精神神経科講師。1999年 帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科科長・講師、2004年 同科長・助教授。2008年より現職。
■公職/日本自殺予防学会常務理事 日本臨床死生学評議委員 日本うつ病学会評議員 日本外来精神医療学会常任理事 日本精神衛生会機関誌「心と社会」編集委員長 多文化間精神医学会理事

今回は、私が勤務している帝京大学医学部附溝口病院の精神神経科の特徴やうつ病の治療法などについて、ご紹介したいと思います。

総合病院としての強みを活かし
他科との連携でうつ病を治療

溝口病院は駅に近く、総合病院ということもあり、うつ病や適応障害といった、いわゆるうつ病圏の人が圧倒的に多い状況です。男女比では、他の病院同様女性が多いですが、駅に近いこともあり男性の会社員も少なくありません。また、近隣にIT企業が多いことから、そうした企業のSEの人たちが多いのも特徴です。患者さんの年齢は当科が対象とする16歳から80代までと幅広く、最も多いのが中高年です。

また、特殊な治療を行っているわけではありませんが、大学病院である利点を活かし、医局ではさまざまな治療法の勉強をしています。薬だけ、カウンセリングだけという単体ではなく、さまざまな治療法についての見識を深め、それぞれのエッセンスを組み合わせて治療に反映させられるように勉強し研鑽を積むことが、大学病院としての強みだと考えています。

うつ病やその軽症状態である適応障害は、まず身体の症状が先に出ます。めまい、たちくらみ、胃腸障害など、自律神経失調症から始まる場合が多いため、患者さんが最初に受診するのは精神科以外の診療科です。精神科医以外の医師は症状を診て、精神科の問題が疑われる場合には精神科に紹介することが求められます。近年、国もそうした認識から、精神科医以外のドクターに対しうつ病研修会などを国の事業として取り組み始めています。

当院は総合病院であるため、内科など精神科以外でうつ病などが疑われた場合、精神科に紹介する態勢ができています。また、逆のケースもあります。例えばストレスから胃潰瘍になった場合、抗うつ薬だけでは治らないため、その場合はこちらが内科の受診を勧めます。こうした連携をスムーズに行うために症例検討会など、院内のさまざまな勉強会を通じて診療科の枠を超えた情報交換を行っています。

他人の話を聞き安心感が得られる
集団認知行動療法

カウンセリングの1分野である集団認知行動療法にも取り組んでいます。カウンセリングは個人単位で行うことが基本ですが、当科では患者さん4~5人のグループで集団認知行動療法を行っています。

この治療法のメリットは、自分の話を聞いてもらえると同時に他の人の話を聞くことで、「自分だけではない」という安心感が得られる点です。ただ他人の前で自己開示をしなければならないため、内気な患者さんには向いていないかもしれません。

医療機関側から見ると、認知行動療法は診療報酬の面でインセンティブにならないという問題があります。日本では2010年度から認知行動療法も公的保険の対象となり、診療報酬の点数は1回の治療で医師が30分以上かけた場合に限り、1日当たり500点(※)となっています。これに対し、通常の通院精神療法は5分以上の診療で1回330点になることから、経営を考えると保険診療内では認知行動療法には取り組みにくいのが現状です。

当院の場合は大学病院としての社会貢献と若い精神科医たちの勉強を兼ねて、保険点数の適用範囲で10回×1セットの集団認知行動療法を導入しています。

※2012年の診療報酬改定前は420点。地域の精神科救急医療体制を確保するために必要な協力などを行っている精神保健指定医以外は、現在も420点である。