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継続勤務を可能にする環境整備に向け 精神科産業医、臨床医の立場からできること

2013.11.05   聞き手:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也
構成:21世紀医療フォーラム取材班

渡辺クリニック院長 渡辺洋一郎氏
渡辺クリニック院長 渡辺洋一郎 氏
1978年川崎医科大学卒業。川崎医科大学精神科学教室入局、同大学講師、神戸アドベンティスト病院心療内科勤務を経て、1988年、渡辺クリニック開設。1997年~大阪大学医学部神経精神科非常勤講師。2004年~大阪精神科診療所協会会長。2012年~日本精神神経科診療所協会会長。2008年日本CHRコンサルティング株式会社設立し、現在は代表取締役会長。日本精神神経学会代議員、日本産業精神保健学会常任理事、日本うつ病学会理事。日本医師会「精神保健委員会」委員。内閣府自殺対策官民連携協働会議委員。日本精神神経学会認定精神科専門医、日本医師会認定産業医

ただ復職させるのではなく、復職後いかに勤務継続させるかを重要視しているのが渡辺クリニック院長の渡辺洋一郎氏だ。同氏は、治療プログラムの中に、復職後の配置転換を含む復職コーディネートを行っており、環境不適応を解消する一助になっているという。また、復職判定には、「生物学的要素」「心理的要素」「環境的要素」の3つの観点から、働く環境に戻る準備ができているかを見極めている。うつ病からの復職に向けた環境整備などについて、渡辺氏に社会的背景なども含めてお話を伺った。
(聞き手:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也 構成:21世紀医療フォーラム取材班)

一人ひとりの能力に応じた配置で
適応障害を防ぐ

「現代型うつ病」と呼ばれる、若年層のうつ症状に注目が集まっていますが、新たな傾向について教えてください。

渡辺 「現代型うつ」は、実は医学界では明確に定義された病名ではありません。ただ、マスメディアなどを通じて、一般的に呼称が広まっていることと、完璧主義で相手を思い自分を追いつめるメランコリー親和型うつ病とは異なるタイプのうつ病が多発していることは事実です。実際に、現代型と呼ばれるうつ症状で精神科を受診する20~30代の患者数も増加傾向にあります。

病名として確立されてないとはいえ、「現代型うつ」は、打たれ弱く、食事会や飲み会など職場内のコミュニケーションに参加せず、自己中心的で他人に責任を転嫁する、そうした新型パーソナリティーに基づいた振る舞いをする若年層のうつ症状と特徴づけることができます。彼らの行動だけに注目すれば、環境不適応のみを解消することが目的となりがちですが、職場環境不適応をベースにしつつも、脳の機能障害にまでいたるうつ病レベルの場合も時にはあります。その場合にはを伴う病態は真性うつ病のとして、薬物治療を含めた治療をまず優先させる必要があります。ただしその後に、職場適応を考える必要があります。

渡辺先生はクリニックでの診察のほか、精神科産業医も務めていらっしゃいますが、現代型うつが増加する背景について、どのようにお考えでしょうか。

渡辺 「現代型うつ」が多発する背景には、社会状況を反映した労働条件や職場環境の悪化が考えられます。社会的に見ても、職場不適応→うつ状態→休職→復職につまづく→退職→受け皿がない→二次的うつ病という経過が考えられます。これを断ち切るためには、職場適応の視点からの予防的対応が必要だと強く感じます。

自己中心的、他罰的といわれるパーソナリティーの人についても、企業側が個々人の能力を活用できる人員配置をすることで、適応障害はかなり防げます。同時に、個人の側は就職前に自分の適性をきちんと見極めることが必要です。

この視点は、産業医として復職のコーディネートをする際にも指標としています。これまで産業医は嘱託の立場で、うつ病からの復職に関わる際は、あくまで外野からのアドバイスをするだけでした。しかし、今では本人の適性にあった職場に復職させることが有効であるという考えから、私が産業医として復職判断にかかわる際には人事部の担当者も同席させています。実際、配置転換された後、長期にわたって勤務を継続できている場合が多いことから、こうした復職コーディネートの有効性は明らかです。