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うつ病治療に求められる一般医と精神科医の連携と、 リワークサポーター制度 第1回(2回連載)

2013.08.27   東洋英和女学院大学教授 横浜尾上クリニック院長 山田和夫氏

山田和夫氏
東洋英和女学院大学教授 横浜尾上クリニック院長 山田和夫氏

うつ病が社会問題化して久しい。特に、近年は現代型うつ病と呼ばれる新たなうつ病の対応に苦慮する企業が増えており、その背景や病気と診断するのかなど、精神科医の中でも意見は分かれるところだ。

2回連載の1回目は、うつ病を取り巻く社会環境や企業の対応、専門医と一般医の連携などについて、東洋英和女学院大学教授であり、横浜尾上クリニック院長の山田和夫氏にお話を伺った。
(取材:21世紀医療フォーラム取材班 赤堀たか子 文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局 エグゼクティブ・プロデューサー 阪田英也)

厳しさを増す社会環境
うつ病の居場所がない“躁的社会”

うつ病を巡る社会環境について、最近の状況をお聞かせください。

山田 近年、うつ病患者にとってますます生きづらい社会になっていると感じています。精神科のクリニックに来る人たちは、社会にうまく適応できなかったり、過重労働などでつぶれてしまったりした人たちですが、その数は、年々増えています。昨年までのデフレ経済の下、企業の業績低迷が続き、家電産業で1万人規模以上のリストラが進められるなど、“人減らし社会”化が進んでいます。

また、非正規雇用者が増えており、2012年のデータでみれば、その割合は、労働人口の35%を占めるまでになっています。数年前、インターネットカフェで寝泊まりするネット難民の存在が問題となりましたが、今はネットカフェに泊る1500円ほどのお金もなく、マクドナルドで100円のコーヒーを飲んで夜露をしのぐ「マック難民」と呼ばれる人たちが増えています。つまり、一歩間違えれば路上生活者と呼ばれる状況にある人たちが大勢いると考えられます。

そうした厳しい雇用環境が、うつ病を引き起こしやすくなっているのでしょうか。

山田 仕事を失った人たちは、そのショックに加え、将来への不安などからストレスが高じて、うつ病になりやすく、一方で会社に残った人たちも、1人当たりの仕事量が増えるため、過重労働に陥り、さらに成果も求められることからプレッシャーを感じ、うつ病になる人が増えています。

また、非正規雇用の人たちは、低賃金でぎりぎりの生活をしている上、雇用も安定しないため、常に不安で、ちょっと負荷がかかると、うつになってしまうのです。

さらに、夫が失業したり、非正規雇用だったりすれば、妻も働かざるを得ませんが、働きたくても、保育園不足で子どもを預けられないのが現状です。2013年2月頃に、SNSへの投稿がきっかけで、そうした苦しい状況にあるお母さんたちが、保育園への入園許可を訴えるデモを行ったことがありました。女性たちも生活の不安にさらされ、うつになるリスクを抱えています。

2012年12月の政権交代後、エネルギッシュな人たちが社会のトップになり、積極的な政策を進めた結果、株価が上昇するなど、社会全体が浮かれた気分になっています。こうした社会を私は「躁的社会」と呼んでいますが、これはエネルギッシュな人たちだけが生きていける社会につながりかねず、現在の状況を危惧しています。

厚生労働省の統計によれば、日本の相対的貧困率は16%に達しています。また、「下流社会」という本では、「日本社会は上流15%、中流45%、下流40%」の社会に変質しつつあると書かれています。

しかも、政府の産業競争力会議では、解雇規制の緩和を提起しており、これが実現されれば、働く人たちの権利はますます弱くなります。そうなれば、うつ病患者は病気になったのは、会社と相性が悪かったせいで、もっと合うところに行くべきと、切り捨てられる危険性も出てくるでしょう。