トップページインタビューそれぞれの「Role と Rule」を意識し、連携することで 社員が心身とも健康に働ける職場に
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それぞれの「Role と Rule」を意識し、連携することで 社員が心身とも健康に働ける職場に

2012.10.16   キヤノン株式会社 矢向事業所健康支援室 産業医 菅 裕彦 氏

職場のメンタルヘルスへの関心が高まる一方で、働く人のうつ病の増加と、「現代型うつ病」と言われる、うつ病の多様化が指摘されている。しかし、実情はどうなのか。
キヤノン株式会社矢向事業所の健康支援室で産業医を務める菅裕彦氏に、企業のメンタルヘルスの現状や課題について話を聞いた。
(取材:21世紀医療フォーラム取材班 萱原正嗣 文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局 エグゼクティブプロデューサー 阪田英也)

キヤノン株式会社 矢向事業所健康支援室 産業医 菅 裕彦 氏
キヤノン株式会社 矢向事業所健康支援室 産業医 菅 裕彦 氏
産業医科大学卒業。大学病院等内科医として勤務後、総合化学会社にて専属産業医として勤務。産業医科大学産業医実務研修センター教員を経て、労働衛生機関にて中小企業の産業医、外資系企業の産業医など経験後、現職。

うつ病の多様化は、
いまに始まったことではないだろう

働く人のうつ病が増えていると指摘されています。また、「現代型うつ病」、「新型うつ病」という言葉が広く知られるようになり、うつ病が多様化しているという声も聞きます。産業医として、間近に働く人をご覧になっているお立場から、職場のメンタルヘルスの現状をお聞かせください。

 まず、「現代型うつ病」「新型うつ病」などと言われる病気についてですが、この言葉が一般に広く知られるようになったのは確かにここ数年ですが、この言葉で語られるうつ病の多様化は、いまになって急に始まったわけではないと思います。

古くは1970年代から、広瀬徹也先生の「逃避型抑うつ」や笠原嘉先生の「退却神経症」の名で、松浪克文先生が「現代型うつ病」など、さまざまに提唱されているようですが、典型的なうつ病と異なる場合の、「多様化」は、少し前からある古くて新しい課題だと思います。また、「新型うつ病」という言葉は精神医学の正式な用語ではなく、多様化する、特に会社勤務はできないが個人の生活はうまくいっているとか、これまでの薬と療養だけでは難しいなど、今までのうつ病と異なる点をまとめる形で使われているというのが、私の認識です。

私個人の実感ですが、私が産業医になった十数年前から、メンタルヘルス不調の多様化は企業の現場で起きていました。メンタルヘルス不調で休んでいる最中に海外旅行を楽しんだり、家が建ったり、子どもが誕生して家族が増えたり、という個人の生活が行えるケースに遭遇したことはありました。こうした経験から、私の感覚としては、笠原先生が提唱された「退却神経症」として指摘された病態の、「本来やるべき本業からは退却し、本業以外の個人的な生活には支障がない」という点が、今でも一番よく表していると感じられます。

近年になって、うつ病の多様化が問題視されるようになったのは、どのような理由があるとお考えでしょうか。

 まず、うつ病などのメンタルヘルス不調、職場のメンタルヘルスに対する意識が社会的に高まり、社員一人ひとりのメンタルヘルスに対してスポットが当たりやすくなり、考えるきっかけがあったと見ています。休暇中の社員の接し方についても、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」のようなガイドラインも出され、療養期間中の過ごし方や会社の対応が示されるようになっています。そして、それにより、休暇中の社員の行動にも目が向けられるようになった結果、仕事以外の場面では積極的な行動を示す人が多く把握され、療養中に積極的な行動ができるが会社に出社できないのはどうなのか、という視点が当たりやすくなったと捉えています。