トップページリワーク医療機関に聞くうつ病は薬以外の部分が重要。本人の抱える問題をチーム医療で整理し、意識させて復職へつなげる
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うつ病は薬以外の部分が重要。本人の抱える問題をチーム医療で整理し、意識させて復職へつなげる

第1回(2回連載)

2012.03.27   東邦大学精神神経医学講座(佐倉)教授 黒木宣夫氏

黒木宣夫 氏
黒木宣夫(くろき・のぶお)氏
1976年東邦大学医学部卒業。1982年同大学医学部精神神経科医局長、1985年愛誠病院精神科医長、1987年東京労災病院精神神経科部長などを経て、1991年東邦大学医療センター佐倉病院精神神経医学研究室准教授、2007年より現職。日本総合病院精神医学会理事長、日本産業精神保健学会副理事長、日本職業・災害医学会評議員、日本産業衛生学代議員、日本職業災害学会評議員、日本社会精神医学会理事、日本賠償科学会理事、うつ病学会評議員。
専門は、産業精神医学、賠償・補償医学、総合病院精神医学、うつ病のリハビリテーション。「PSTD~医の診断と法の診断」「産業保健ハンドブックV 働く人々のCommon Diseasesの臨床と予防管理」「うつ病の臨床と予防管理の実際―過重労働とメンタルヘス」ほか、著書多数。

東邦大学医療センター佐倉病院メンタルヘルスクリニックは、総合病院としては全国に先駆け、2007年10月からうつ病のリワーク・プログラムを導入している。同院精神神経医学教室教授である黒木宣夫氏のもと、臨床心理士や作業療法士によるチームワークで、リワークに取り組んでいるほか、千葉県の障害者職業総合センターとも連携を図り、地域におけるうつ病リワークの中核的な役割も果している。
2回連載の第1回は、黒木氏にプログラムを導入した経緯や課題、うつ病の治療や問題点、大学病院における精神医学教育、臨床心理士による早期介入など、幅広くお話を伺った。
(取材:日経BP社日経BP net編集プロデューサー 阪田英也 構成:「Good Doctor NET」、WEB「メンタルヘルスとリワーク」編集デスク 但本結子)

復職への自信をつけるために
リワーク・プログラムは不可欠

総合病院としては、かなり早い時期にうつ病のリワーク・プロラグムを導入されたと伺っています。その経緯についてお聞かせください。

黒木 当院がリワーク・プログラムを開始したのは2007年10月からです。今でもリワーク・プログラムを導入している総合病院は少なく、恐らく当院と横浜市立大学附属病院、それから九州大学病院ぐらいでしょう。きっかけとなったのは、うつ病患者は休職して、2週間あるいは1カ月に1回、薬を取りに来る以外はずっと自宅で療養しているだけです。統合失調症の場合、以前からリハビリとしてのデイケアがありましたが、うつ病には何もない。薬と療養だけで本当に治るのだろうかと疑問に思っていたこと、さらに近年うつ病患者が増加したことも、プログラムを導入した要因です。

一時期、うつ病は「心の風邪」で、薬を飲んでいれば治ると言われていましたが、実際それでは治りません。また、たとえ病気は寛解しても、復職する際に緊張を強いられて不安定になったり、どうしても病気を引きずってしまうことがあります。自信をつけてもらうためにも、リワーク・プログラムは不可欠だと考えていました。

全国で一番初めにうつ病のリワーク・プログラムに取り組んだのは地域障害者職業センターですが、完成までには相当の試行錯誤があったようです。10年ほど前からプログラムを作り始めたところ、難しいケースに出会うと対応に苦慮することもあり、プログラムの開発は難しかったと聞いています。その理由として、医療機関ではないことも一つ挙げられるかもしれません。したがって、休復職を繰り返し、再発した人の施設の再利用に関しては、制限をつけるという条件をつけたようです。

そんな中で千葉県の障害者職業総合センターは、全国に先駆けリワーク・プログラムのモデル版を作り、各都市の障害者職業センターに展開していきました。当院とは地理的にも近く、センターでのリワークを望む人には患者を紹介するなど、両者の連携はうまくいっています。但し、同センターは、国家公務員、地方公務員が利用できないことから、当院のデイケア利用者のうち3割程は公務員が占めています。

当院のプログラムは、もともとNTT東日本関東病院で復職プログラムを手がけられている秋山剛先生のもとにいた作業療法士が立ち上げに関わっていたため、同院の復職プログラムがベースです。今の形になるまでに1~2年はかかったでしょうか。当初は認知行動療法も組み込んでいましたが、病態が安定している人もいれば不安定な人もいて、さまざまな病態の人たちを一緒にするには無理があり、一旦プログラムから外して現在は毎週水曜の15~17時に実施しています。また、必ずしも、就業している人だけが認知行動療法を受けるのではなく、就業が近い人や復職の準備ができて安定している人などを移行させていく上で利用しています。まずは認知行動療法の基礎の基礎を教え、安定期に入ったら取り組む流れです。