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“話す”ことは“放つ”こと キャリアカウンセリングによるリワーク支援

2011.09.13   法政大学キャリアデザイン学部教授 宮城まり子 氏

宮城まり子(みやぎ・まりこ)氏
法政大学キャリアデザイン学部教授

なぜ、リワークが成功しないのか。その根底に“キャリア”形成不安があると痛感し、キャリアカウンセリングによる支援、問題解決を提唱してきた法政大学キャリアデザイン学部教授・宮城まり子氏。キャリアとは何か。なぜ、キャリアカウンセリングが必要なのか。企業のキャリア相談室のスーパーバイザーとして数々のカウンセリングを行ってきた実績をもとに、キャリアサポートの必要性について伺った。
(21世紀医療フォーラム取材班 原田英子 文責:日経BP社日経BPnet編集プロデューサー 阪田英也)

キャリアとは“生き方”であり“働き方”である
リワークにはキャリア形成支援が不可欠

宮城先生はリワークには“キャリア”という視点が欠かせないと指摘されています。そう思うようになったきっかけは何だったのでしょう。

宮城 大学教員になる前は、臨床心理士として精神科や心療内科で働いていました。特に、医師と連携しながら、メンタルヘルス不調によって休職中やリワーク予定者のカウンセリングを多数行ってきた結果、多くの事例に共通する心理特性がみえてきました。

「休職することで、上司や同僚など職場に迷惑をかけて申し訳ない」「メンタルで休職するようなヤツはもう使えない、重要な仕事は任せられない、会社から見放されるのではないか」「自分だけ昇進昇格に乗り遅れ、取り残されていくのではないか」。復職直前に会社に挨拶に行き、周りが精力的に働いているのを見ると、よけい気後れして「復職してもついていけるだろうか」「キャリアを取り戻せるだろうか」と不安でしようがないわけです。

こうした今後のキャリア形成に対する不安を抱えたままリワークしても、心理的不安は取り除かれません。この不安が軽減されない限り、再燃再発の可能性が高いことを知り、うつ病リワークにはキャリアカウンセリングによる支援が必要だと痛感したのです。どういう働き方や生き方をし、今後、どういう専門性を活かし、自分の強みをつくって、人材としての質的価値を高めていきたいのか。このようなキャリア形成についての支援しない限り、キャリア不安はなくならないし、ひいてはうつ病リワークも上手くいかないのではないか。そういう思いに駆られて、10年ほど前に米国に留学しました。

終身雇用や年功序列とは無縁の米国では、自分のキャリアは自分で責任を持つもの。会社にキャリアを任せるという発想はありません。自分のキャリアをどうするかを絶えず考えながら勉強し、自己啓発し、自分でキャリアを磨いていく。

ところが日本では、そういうキャリア観がないため、いったん何かでつまづいて会社に見放されたら、「自分は、もうダメだ」と落ち込み、将来に不安を感じて眠れない、落ち着かない、アルコールに依存する。そして、うつ病を発症し、仮に復職してもキャリア不安から再発につながっていくケースが多いようです。

働く人の支援に、あらためてキャリアカウンセリング的なアプローチが必要だと痛感して帰国したのが2000年。著書『キャリアカウンセリング』を著したのが2002年。その頃からキャリアカウンセリングがブームになり出し、厚生労働省がキャリアカウンセラーを5万人養成する計画を打ち出し、2009年には国家資格になりました。資格名は「キャリアコンサルタント」。それまで、臨床心理士をはじめ、カウンセラーの国家資格は1つもなかったのですから、それだけニーズの高さがうかがえると思います。

キャリアカウンセリング、キャリアデザインとは、どのようなものでしょうか。

宮城 キャリアといえば、職歴や経歴と思われるでしょう。地位が上がる、給与が増えることをキャリアと結びつけるかもしれませんが、そうではありません。その人が何を通して自分を表していくかという“生き方”であり、“働き方”であり、キャリアデザインとは、その生き方や働き方の「設計図」を持つことであり、自己表現の1つの形です。

3年後、5年後に、自分はどうありたいか。その自分のありたい姿があれば、人はそれに向けての自分の行動がわかってきます。昔は、いい会社に入りさえすれば、自分がどうありたいか自分で考えなくとも会社が決めてくれ、会社に依存して会社の言う通りにしていれば良かった。ところが、今は大手でも潰れる会社もあれば、突然の工場閉鎖、リストラ、給料カットなどもあり、会社に自分のキャリアを預けているわけにはいかなくなりました。

自分のキャリアは自分で考え、将来の設計図を持って自己管理していかなければなりません。自分のリスクマネージメントは自分でやらざるを得ないわけです。自分のこれからのキャリアについて考えていない人がうつ病や休職してしまうと、途端に自分はどうしていいかわからなくなってしまいます。もともと設計図などないわけですから。

自分は会社のなかでどうしたらいいか、この会社にいることが果たして本当に幸せなのだろうか、むしろ辞めて全然違う分野にいったほうが自分を活かせるのではないか――こうした「働く価値観」を支援し、整理し、明確にしてあげる必要があります。