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被災者支援に当たる救助者、支援者が知っておくべき「心のケア」

2011.07.12   岐阜大学大学院医学系研究科精神病理学分野教授 塩入俊樹 氏

塩入俊樹(しおいり・としき)氏
塩入俊樹(しおいり・としき)氏
1961年、東京生まれ。1987年、滋賀医科大学医学部卒業。附属病院勤務を経て、1996年~1998年、カリフォルニア大学アーバイン校精神医学講座 Visiting Assistant Professor。帰国後、新潟大学医学部附属病院勤務、新潟大学医学部助教授、新潟大学大学院医歯学総合研究科助教授を経て、現在、岐阜大学大学院医学研究科精神病理学分野教授。

はじめに

まず初めに、東日本大震災でお亡くなりになられた全ての方のご冥福と、そして全ての被災者の方々の一日も早い復興と心身のご健康を心より願っておりますと同時に、我々日本人全員が一丸となって、生かされた命を大切に、共に支え合い、共に生き抜いていくことが、今、世界中の人々から求められているのだと、感じています。そして、この未曾有の災害に対して、今、私たち精神科医ができることを是非させていただきたいと、強く心に刻む毎日です。

そして次に、はっきりさせておかねばならないことは、新潟中越地震の際の私の経験は、残念ながら、今回の震災に際しては通じない、たぶん、あまり参考にはならないのではないかということです。つまり、地震に加えて大津波によって、推定数万人余の方が死亡している可能性があるような、未曽有の天災は、阪神淡路においても経験がなく(死者約6,400名余)、今後の状況がどのようになっていくのか、誰もわからないというのが、真実だと思います。

したがって、私の新潟県中越地震での経験で、今回、ものが言えるのかと言えば、答えは「ノー」ですが、新潟の経験からのごく一般的なアドバイスということで、ご了解いただければと存じます。

岐阜大学大学院医学系研究科精神病理学分野教授 塩入俊樹

 

地震、津波の被害者で、現在、避難所に収容されている方々に対しては、直接的に話をする場合に、どのような配慮、注意が必要でしょうか。

塩入: 救助者、支援者の方といっても、被災者の方にとっては、初対面となりますし、また避難所におられるということは、当然、ご自宅は被災されて住めない状態です。そして、今回は大津波によって家族や親戚縁者、友人など、多くの知り合いの方が亡くなられている、あるいは行方不明となっている場合も、十分想定されます。したがって、被災者の方々は、日々非常に大きな、そしてご自分では解決できない不安を抱えておられます。

このような被災者の方の心理状態を十分理解した上で、被災者の方をご自分の親・兄弟・親戚・友人と思って傾聴することが大切と思います。例えば、一例としては、まず、そばに寄り添い、安心感を与えること。普段よりもゆっくりお話されて、被災者の方のニーズを正確につかみ、それに応えること。その際、言葉は短く、はっきり伝えることが大切です。また、辛い体験を無理に聞き出すようなことはやめましょう。被災者の方をご自分の親・兄弟・親戚・友人と思い接すれば、当然、人間としての思いやりや温かさ、配慮が生じますので、被災者の方々の心を傷つけてしまうことはほぼないのではないかと信じ、願っております。

そして、救助者、支援者の方の「一人ではありませんよ、私達、皆がいつもあなた方のそばにいます」というメッセージが、被災者の方々、一人ひとりの心に沁み入ることができれば、生き抜く力のサポートが可能かもしれないと、思います。そういう意味で、同じ救助者、支援者の方が定期的に顔を見せていただけるような環境、実際にはなかなか難しいでしょうけれども、理想的にはそのような支援体制が望まれます。