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健康を害さないためにも 睡眠教育や認知行動療法を取り入れるべき

第1回(2回連載)

2011.06.28   北里大学大学院 産業精神保健学教授 田中克俊 氏

田中克俊 氏
田中克俊(たなか・かつとし)氏
北里大学大学院 産業精神保健学教授。医学博士。1990年産業医科大学医学部卒、(株)東芝、昭和大学を経て現職。

産業保健の専門家として職場のメンタル施策にかかわってきた北里大学大学院産業精神保健学教授の田中克俊氏。日本ではうつ病など精神疾患の早期発見である「二次予防」や復職支援である「三次予防」への取り組みが進む一方、病気の発症を防ぐための「一次予防」が立ち遅れており、早急な取り組みが必要という。具体的な施策について伺った。
(21世紀医療フォーラム取材班 狩生聖子 文責:日経BP社 BPnet編集プロデューサー 阪田英也)

田中先生は産業保健のご専門家として、職場のメンタルヘルス施策にかかわってこられました。現在、日本のメンタルヘルス施策において、今、やるべきことについてのご意見をいただければと思います。

田中 メンタルヘルスの予防医学においては、病気の発症を防ぐための「一次予防」早期発見である「二次予防」、復職支援などの「三次予防」に大きく分けることができます。

日本では二次予防、三次予防に力を入れる企業が増えています。リワークなども普及してきています。しかし、「一次予防」に対するアプローチが抜けてしまっているのが課題です。ここにもっと力を注ぐ必要があります。

ヨーロッパを中心に海外の職場では「一次予防」を中心にアプローチしていこうという動きが目立ってきています。メンタルヘルスと組織の生産性向上のために、職場の雰囲気や環境を良くしようというシステム作りを始めています。

日本で一次予防が進まなかった理由はなぜでしょうか。

田中 わが国では、メンタルヘルス不調を呈した労働者に対して十分な就業上の配慮や医療機関に結びつけるなどの適切な対応を図らなかったことを、安全(健康)配慮義務違反として企業の責任を認める判例が多く出されました。このことから企業のリスクマネジメントとして昨今のメンタルヘルス対策が進んできたという背景があります。

職場は、医療施設ではありませんので、発症した患者さんを働かせながら健康管理を行うのは簡単ではありません。もちろん、病気の状態なのに無理強いしないという配慮は不可欠ですが、職場で行うべきもっと大事なことは、仕事によるストレスでメンタルヘルス不調に陥ることを可能な限り阻止しようという取り組みです。

今後の課題である一次予防についてですが、具体的にはどのような施策が考えられるのでしょうか。

田中 これまでの研究で一次予防の効果があると考えられ、日本の職域での応用が可能と思われることとして3つが挙げられます。①睡眠教育②認知行動療法③組織行動学の応用です。まず、①の睡眠教育からご説明します。

人間は、生き物として、寝る、食べるがしっかりしていれば生きていけないことは明らかです。睡眠は、神経系、免疫系、内分泌系がうまく働くために非常に重要な働きを持っているため、睡眠の問題が発生すると、人が病気になる確率は格段に高くなります。精神疾患についてもその原因は実際にはまだほとんどわかっていないわけですが、ストレスをはじめとする様々な要因の有無に関わらず、良い睡眠が取れている人は、精神疾患の発症リスクが低いことが知られています。

労働者の健康管理においては、まず、よく眠りながら働いてもらうという基本が大切。このことを抜きにしてメンタルヘルス対策は始まりません。「急がば回れ」で、より良い状態で働くためには「よく眠るスキルを身につけてもらう」ということが大事です。