トップページコラムメンタルヘルスケアの現場からうつ病回復の記録(3)「再燃」で振り出しに戻ってしまった
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うつ病回復の記録(3)「再燃」で振り出しに戻ってしまった

2011.05.24   2011.05.24 埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授 大西秀樹

精神科クリニックを受診してから3週間が経ちました。担当医の指示どおりに薬も飲み、自宅での安静を守っていたためか、夜も眠れるようになり、気持も先週より落ちついています。身体も動くようになってきました。

新井さんは晴れ晴れとした気分で妻に話しかけます。

「やっといやな気分から回復してきたよ。本当に大変だった。でも、安静にしているのも辛いんだよ。クリニックの先生は『ゆっくり休んでください』なんて言ってたけど、もうこんなに身体が動くから問題ないと思うよ。家にいるとストレスが逆に増えそうだし、試しに一泊二日で温泉旅行に行かないか」
「先生は休んでくださいとの話だったと思うけど、大丈夫かしら」
「それは、調子の良くない人の話じゃないかな。これだけ身体も動くし、眠れるようになったから、もう問題ないと思うよ。それに、動かないと身体がなまって復帰が遅くなると思うんだ。ゆっくりしたいし、一緒に温泉へ行こう」
「それもそうね」

「温泉に行ってもっとゆっくりしよう」

妻も看病で疲れていたこともあり、夫の提案に賛成しました。そして、自宅から電車とバスを乗り継いで3時間のところにある温泉地へ行くことにしました。初日は温泉でゆっくりと過ごし、翌日は周囲を散策してから帰るという無理のない計画を二人で立てました。

当日、二人は電車に乗り温泉地へ向かいます。
「こんなに早く良くなって良かった。早く復帰もしたいものだよ」
新井さんは嬉しそうに語りかけます。

2時間ほど電車に乗ってからバスにのり、温泉地へ着きました。山並みは紅葉で美しく、源泉からは湯気が立ち上り、いかにも温泉地という光景です。ところが、そのころから新井さんの足取りがなんとなく重くなってきました。それに気づいた妻が「あなたどうしたの、大丈夫?」と心配そうに尋ねます。「久しぶりに電車とバスに乗ったから疲れたんじゃないかな。ひと風呂浴びれば良くなるよ」というものの、その表情には明らかに疲れがにじみ出ていました。

食欲も無く、不眠状態に

目的の温泉宿に到着しました。新井さんは疲れ切っています。部屋に入るなり、「こんなに体力が落ちているなんて」と言いながら畳の上に横になります。しばらく休んでから、温泉に入ってみましたが、体は重いままで入浴も気持良くありません。早々に入浴を終わらせ部屋へ戻ります。美味しそうな夕食もあまり食べる気になりません。

調子が良くないと感じた新井さんは早々に布団に入り休むことに。ところが、夜中に何回も目が覚め、ゆっくり休むこともできませんでした。

翌日は、計画していた周囲の散策もあきらめ、早々に帰宅です。帰り道は動かない身体をやっとの思いで運び、ようやく自宅へたどり着きました。自分たちで計画した旅行は散々なものになってしまいました。帰宅しても身体は重いままです。食事にも手をつけずに床に入り、夜もよく眠れないまま朝を迎えました。

あまりにも調子が良くないので翌日クリニックを受診することにしました。疲れ切った様子の新井さんをみた先生は「どうしたのですか?」と心配そうに尋ねます。妻がこの2日間の経緯を説明したところ、