トップページコラム医療万華鏡健康保険料のベースは年齢より所得で
Good Doctor NET AGING Web 宇治おうばく病院 うつ病~こころとからだ 話してみよう うつの痛み うつ病・認知症コンソーシアム 冊子バナー 特別協賛:シオノギ製薬 ココ朗くん

健康保険料のベースは年齢より所得で

Good Doctor NET 2011. 1. 17 掲載記事より

2011.01.17   医療ライター 須藤公明

 厚生労働省の発表によれば、2009年度の医療費は概算で前年度より3.5%増加し、35兆3000億円になったとされる。これは、2001年度以降では額、伸び率ともに最高で、その要因としては高齢者の増加、費用のかさむ高度医療の利用者の増加が指摘されている。高齢化の進行状況をにらみ、先端医療の研究開発状況を展望すれば、今後一層、医療費が膨れ上がることは避けられないと思われる。だがしかし、そこに不安がある。その負担の増加に耐え得る社会システムを構築できるかどうかである。

 現在すでに、健康保険制度はほころびている。企業の健康保険組合に解散が相次ぎ、巨額の税金を投入しても国民健康保険の収支は一向に改善しないことが一例だ。このままでは「世代間戦争」が勃発しかねない。なぜか。保険制度というのは本来、一定の集団における助け合い、つまり相互扶助の仕組みなのだが、その負担と受益の関係の歪みが大きいからにほかならない。「年金を払い続けたところで、もらえるわけがない」という発想と一緒で、その根底には不公平さがある。

 そこで現在、70歳以上の医療費が全体の44%ということからくる高齢者医療制度改定の議論がなされている。だが、側聞するところによれば、それは抜本的なものではないらしい。依然として年齢をベースとし、税金の投入などで帳尻を合わせる感じだからだ。だがそれでは、数年間延命させるのが関の山だろう。中長期的な人口構造の変化に目をつぶり、本当の問題を先送りしているからだ。病原には手を触れず、膏薬でごまかそうという算段である。知恵がないというより、お役所仕事の典型ではある。

 本来、取り組むべき第一は、国民全体の健康の維持と、そのための費用負担の在り方のはずである。そういう視点からすれば、まず、年齢による線引きから見直す必要がある。現在、定年というか雇用は60歳から65歳へと延長する動きが高まり、かつ「70歳までは働きたい」と希望する人が増えてもいる。また、「日本の個人金融資産の大半は還暦を過ぎた人のもの」といわれるように、高齢者はそれなりの資産家でもある。もとより、個人による差は大きいだろうが、老後のための準備はできている人も多いわけだ。

 このような事情を考え合わせれば、健康保険料は、年齢より所得をもとに徴収すべきではないか。現実に、後期高齢者でもかなりの勤労収入、資産収入がある人も見られる。そういう人々には、若年層というか現役世代と同様の負担をしてもらってもいい。つまり、健康保険料は、まず所得を基準にという考え方への変更である。古希を過ぎても働けるのは、本人の健康維持の努力の成果でもあろうが、万が一の場合にお世話になるセーフティーネット存続に応分の協力をしてもらおうというわけである。

 それと同時に、個人の医療費の負担の仕方も見直す必要がある。こちらは所得に関係なく適用するもので、例えば総額3000円未満の場合は保険を使えないようにする方法はどうだろうか。そうすれば「病院は年寄りのサロン」などという事態はなくなるだろう。また、ちょっと風邪気味だからとか、さらには二日酔いで、という受診も大きく減るだろう。実際、「薬局で薬を買うより病院でもらう方が……」という話をよく聞くし、これだけでも医療費膨張の歯止めあるいは削減につながるのではないか。

 もとより、医療費を削減することが目的ではない。本当の目的は、健やかな暮らしを営むことだ。個人として、また社会として、である。そのために不可欠なことは、自助であり自立だ。心身の健康維持のための基幹システムである健康保険制度を世代間戦争の引き金にするようなばかなまねは、断じて避けなければならない。次世代へのしわ寄せを放置してのバラマキは、社会そのものを崩壊させかねない危険性をはらんでいる。今必要なのは、小手先の改善ではなく、発想の転換による抜本的な改革のはずである。