トップページインタビュー高齢者のうつから見えてくる日本の医療制度の問題点
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高齢者のうつから見えてくる日本の医療制度の問題点

お年寄りの特性を理解し、地域で支える仕組みが必要

2011.02.08   米山クリニック院長・作家 米山公啓氏

米山公啓 氏
米山 公啓(よねやま・きみひろ)氏
1978年聖マリアンナ医科大学卒業。98年聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を辞して、本格的な作家活動を開始。著書に、「親が死ぬまでに聞いておきたい45のこと」(中経出版)、「もの忘れを防ぐ生活習慣」(大和書房)など多数。
米山公啓ホームページ

「脳が若返る30の方法」(中経出版)など、多くの著書で知られる米山公啓氏。東京都あきる野市の米山医院では、院長、そして地域のかかりつけ医として活躍している。同氏は神経内科が専門で、認知症や老人医療にも詳しい。こうした背景もあって、うつ病やうつ症状でやってくる高齢者の患者が多いという。「うつ病やうつ症状を呈している高齢者から、日本の医療制度の問題点が見えてくる」という米山氏にその現状と課題を聞いた。
(取材・構成:21世紀医療フォーラム取材班 狩生聖子 文責:日経BP社 BPnet編集プロデューサー 阪田英也)

米山先生のクリニックには、うつ病やうつの症状を訴えてくるお年寄りが多いそうですね。

米山:私のクリニックは、東京都あきる野市、JR五日市線の東秋留(ひがしあきる)駅の近くにあります。高齢のうつ病患者さんが多いという一番の理由は、あきる野市にお年寄りが多いということもありますが、私のクリニックが比較的、すいていることもあり、患者さんの話しをじっくり聞いてあげられる環境にあることだと思います。

初診でやってくる患者さんの多くは、すでにいろんな病院で不調を診てもらっています。心療内科や精神科などの専門科で、「うつ病」と診断された人も少なくありません。でもどうやら、自分の病状が十分に理解されたと感じていない。

「時間はありますから、ゆっくり話してください」というと、多くの患者さんが、「これまでの病院では話しを聞いてもらえなかった」。「パソコンに向かってばかりで、顔を全然みてくれなかった」と言い始めます。

もちろん、私に対しても最初はなかなか心を開いてくれません。話と言っても、医者の悪口ばかり、ということもあります。それでも黙って話しを聞いて行くと、やがて患者さんのほうから、「実はこれまで病気もしたことがなかったんですが、主人が死んでからふさぎこむようになってしまったんです」といった具合に、うつになった背景をぽつぽつと話してくれるようになります。

先生は、患者さんが言う「医師が話しを聞いてくれない」ということの背景についてどのようにお考えですか。

米山:医療制度の問題もあって、医師はできるだけたくさんの患者を診なければなりません。混んでいるところであればなおさらで、うつ病に限らず、話の長い高齢者の患者さんはどうしても敬遠されてしまうということがあります。

しかし、話を十分に聞かないとなかなか正確な診断にたどりつけない。うつ病の前に、頭痛だから頭痛薬、胃の不調だから胃薬という形で薬ばかりが処方されてしまうことになります。患者さんは複数の医療機関にかかっていますので、薬を見せてもらったら20種類も飲んでいた、というケースも少なくありません。ですから初診では、まず、効果がだぶっていたりして、いらない薬をやめてもらい、できるだけ薬を減らしていく、という作業をすることもあります。

もちろん、これは私のクリニックが混んでいないからできることで、もし、そうでなかったらこうはいかないでしょう。いずれにしても、高齢者のうつ病から、日本の医療制度の問題点が浮かび上がってくるんですね。