トップページコラムメンタルヘルスケアの現場から「うつ病の身体症状」
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「うつ病の身体症状」

Good Doctor NET 2009. 7. 3 掲載記事より

2009.07.03   大西秀樹

うつ病は現代社会で増加傾向にあり、この病気で休職する社員も増えている。うつ病の早期発見、治療、および社会復帰システムの構築からなるうつ病対策は、社員が安心して働ける健全な職場、本来の意味で生きがいのある職場を構築するために欠かすことはできない。

前回と、前々回のコラムではうつ病の中心となる症状「抑うつ気分」と「意欲低下」について解説した。

しかし、それだけでうつ病を説明することはできない。うつ病という病気は他にも様々な症状を呈するためだ。その症状は精神症状ばかりではない。身体症状もある。心の病気であるうつ病に身体症状が出るなどというと違和感を抱くかもしれないが、身体症状はうつ病を知る上で欠かせない症状の一つである。

今回は、うつ病の身体症状を中心に解説したい。

うつ病にみられる「身体症状」

表1 うつ病の診断基準
表1 うつ病の診断基準

心の病であるうつ病の「身体症状」。読者の方々には、違和感があるかもしれない。
表1はうつ病を診断するための基準であるが、9つの基準のうち、5つは身体症状である。これからもわかるように、うつ病で身体症状が出ることは多い。

不眠はほぼ必発の症状で、眠りにつけない(入眠困難)、数時間で目が覚めてしまう(中途覚醒)、早朝に目が覚める(早朝覚醒)など、様々な形で現れるが、不眠症との診断で睡眠薬の処方のみで終わってしまうことも多い。

食欲低下、体重減少は消化器に何らかの異常があると思わせる症状であるし、全身倦怠感も何らかの「身体の病気」にかかったと思わせるような症状である。制止(頭の回転が鈍くなったと感じる。)、集中困難、決断困難などは仕事上の疲れなどとみなされてしまうことも多いのではないだろうか。

診断基準に含まれていないが、めまい、ふらつきなどの耳鼻科的な症状、痛みなども生じることがある。いずれも「うつ病」に関連して生じる症状である。しかし、一つ一つの症状はどう考えても、うつ病に結びつくと考えにくい。したがって、患者さんが受診する診療科は精神科以外であることが多い。

うつ病にみられる「精神症状」。
「身体症状、精神症状」は外見から判断できるか?

もちろん、精神症状も認められる。うつ病になると自責的になり、「会社に迷惑をかけているので辞めたい」などと言い出すこともある。辛い状況が続くと、こんなことなら消えてしまいたいと考えたり、自殺が頭によぎるようになる。

このような状態がそのままにされていると、自殺企図といった最悪のパターンを迎えることもある。

うつ病では、倦怠感、食欲低下、不眠など身体的な症状が目立つので、周囲からみると身体の不調にみえてしまうことも多い。本人も身体がだるいなど身体症状が中心のため、うつ病になっているとは思わずに精神科以外の科を受診してしまう。当然ながら“異常なし”の診断を受けることが多い。

精神症状としては、抑うつ気分、意欲低下、自責感などがあるはずだが、身体面の不調にマスクされて、周囲、本人ともに気づかないことも稀ではない。

うつ病の部下への対処法~あなたの一言が同僚・部下を救う

うつ病という病気は、心の病であるにもかかわらず、多くの身体症状を呈する病気だと理解いただけたと思う。それでは、うつ病をどのように発見し、医療へ結びつけるのがよいのであろうか?

うつ病は身体症状をはじめ、様々な症状を呈する病気だということは既に述べた。また、うつ病はまれな病気ではない。したがって、体の症状を訴えたとしても、「もしかしたらうつ病?」という考えを常に持っておくことが必要になる。

仕事のペースが落ちたとき、ぼんやりするようになった時、だるそうにしている時など、業務の進行も大切だが、それ以上に大切なのは部下、同僚彼ら自身である。

このような時、「最近、元気がないが、大丈夫か」の一言でどれほど救われることか。この一言で堰を切ったように辛さを訴えてくるかもしれない。そうすれば専門家に診てもらうきっかけも生まれる。仕事はトータルな視点で物事を見ることが大切だと思う。その見方を自分の部下、同僚に向ければよいのだ。視野を広く持つことで、あなたの部下は救われるだろう。