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部下・同僚を守るため、これだけは知っておきたい

Good Doctor NET 2009. 5. 4 掲載記事より

2009.05.04   大西秀樹

現代社会でうつ病は増加傾向にあり、この病気が原因で休職する社員が増えている。大切な社員がうつ病にかかっていることを早期に発見、治療し、復帰に持ち込む形のうつ病対策は、社員が安心して働ける健全な職場、本来の意味で生きがいのある職場を構築するために欠かすことはできない。
前回のコラムでは「抑うつ」-気分が滅入ること-について解説した。抑うつはうつ病を理解する上で大切な症状である。ただ、すべてのうつ病患者さんで気分が滅入るわけではない。もうひとつ大事な症状がある。
「意欲低下」である。

今回は、“抑うつと”並ぶ大切な症状である“意欲低下”について学んでみたい。

■「意欲低下」とは?

意欲-進んで何かをやろうとする心の動き-がうつ病では低下する。そして、その低下は家庭・社会生活の全般に及ぶ。家庭生活の場面では、家事をしなくなり、好きな趣味をやらなくなったりする。そして社会生活の面では仕事への意欲が低下する。

意欲と同時に興味・関心の低下も生じる。たとえば、春には花を美しいと感じるのが一般的だが、うつ病になるとそれも感じられなくなる。うつ病患者さんに聞いてみると、桜の花は「灰色」に見えたという。世の中全てがセピア色に見えていた患者さんもいた。

ペットの犬を飼っている人では、犬が尻尾を振って寄り添ってくるのをうっとうしいと感じ、お孫さんのいる人では、お孫さんが騒いだり、近づいてくるのをうっとうしいと感じるようになる。

■会社での様子は?

意欲が低下すると、仕事に対する関心が薄れてくるので、作業能率が低下し、仕事は遅くなり、期限が守れないなどの支障が生じる。仮に、こなせたとしてもかなりの時間がかかるようになる。集中も出来ないので、ミスが多発する。当然の結果として、成績は低下する。

周囲に対する関心も薄れてくるので、一見ぼんやりしているように見えることも多い。また、出社意欲も低下するので、遅刻・欠勤なども増えてくるだろう。仕事が遅く、ぼんやりしているようにみえるので、“サボっている”と間違えてしまうこともあるので注意したい。

■「興味・意欲の低下」は外見から判断できるか?

今まで、きちんと仕事をしていた人で、ミスが多くなる、期間内にできなくなる、遅刻が増えるなどの場合は、作業能率低下、ミスの増加という表面上の問題ではなく、その裏に潜んでいる意欲の低下にまで気をつけて観察することで判断は可能になる。
ただ、このように辛い状況にあっても、責任感の強さから、かなり無理をして仕事をする人がいる。その場合には、周囲にはわからないということもありえる。

■対処法-あなたの一言が同僚・部下を救う。

今まで、普通に仕事をしていた人の能率が落ちてきた場合、売り上げ成績が急に落ちた場合。ミスが多くなった場合。遅刻が多くなった場合。そして、なんとなくぼんやりとしている感じがあった場合。
どうすればよいのか?
成績の落ちたことを本人と話す必要はない。逆に話してはいけない。
ミスが多いことを責め立ててはならない。

まず、すべきことは部下にうつ病の兆候がないか確認することだ。
うつ病の人は、気分の落ちこみ、意欲低下を自から話すことはまずない。だから、聞かなければならない。
「最近、疲れている様だが何か困ったことはないか」
「辛そうだが、何か手伝えることはないか」
この一言で、部下・同僚は救われる。
その上で、本人が、意欲が出ない、落ち込んでいると答えたならば、産業医などと相談して、医療機関に結びつけることが必要になる。

作業能率の低下を叱責したり、ミスを責め立てたりすることは、逆効果であり、場合によっては自殺を誘発することもあるので注意したい。

しかし、うつ病の社員の中には、会社での業績を心配するあまり、意欲が低下していても言わないこともありえる。ここで、大切になるのが職場の雰囲気である。普段よりお互いが支えあい、部下が上司に話しやすい職場環境、病気で休んだ人が復帰しやすい職場環境を構築しておくことが大切である。お互いが支えあうような職場は、うつ病の早期発見はもとより、うつ病発症の予防、早期の復帰にも役立つと思う。

一見、大変な作業にもみえるが、このような職場は、社員が安心して働くので最終的には業績の向上にもつながるだろう。