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やさしい心理学から学ぶ対人関係ストレス緩和法

Good Doctor NET 2009. 6. 29 掲載記事より

2009.06.29   水木 さとみ

ストレスに関する様々な調査報告、どの調査からも最も上位に挙げられているのが“対人関係ストレス”です。人と人との関係性のなかで、時には相手が理解できなくなってしまったり、嫌悪感や苦手意識を抱いてしまうことも少なくありません。

 私たちは、仕事をしていく上でも、日常生活の中でも、対人関係から生じるストレスから逃れることはできません。しかし、自らそのストレスを軽減していくことは可能です。

 今回は、やさしい心理学を交えて対人関係におけるストレスへの緩和に役立てて頂く事を願ってお話させていただきます。

人を正確に理解することは可能なのでしょうか?

 人を理解していくにあたって、果たしてどこまで正確に相手を把握しているのでしょうか? 私の講演では、ユニークなクイズを出して「人の認識の相違」についてお話しています。

 1枚の若い男女が写っている写真を見せて「この2人の関係は次のうちどれでしょう?」と、3つの選択肢から1つだけ答えを選んで頂きます。さらに、その選んだ理由も聞くことにしています。

(1)恋人同士
(2)結婚2年目の夫婦
(3)全くの他人

 会場では、興味深くその写真を観察し、様々な意見が飛び交います。講演の度に、毎回、試しているのですが、いつも必ず回答が分かれ、さらに面白いことに、同じ回答を選んだ方々であっても、その理由は異なっています。

<回答理由の一例>

(1)恋人同士を選んだ人の理由:「女性の笑顔から恋人同士だと感じた」「ふたりの距離と雰囲気から恋人同士と感じた」

(2)結婚2年目の夫婦を選んだ人の理由:「密接感が自然であり夫婦だと思った」「女性の安心している表情から夫婦だと感じた」

(3)全くの他人を選んだ理由:「笑顔はつくっているという感じがしたことから他人だと思った」「ふたりの雰囲気がなんとなくでき過ぎていて他人だろうと感じた」など

 このように、まず、選んだ回答は3通りに分かれ、選んだ回答が同じであっても、その理由は人それぞれ異なっていました。

 このクイズを通して、私が皆様にお伝えしていることは、同じ時に、同じ会場で、同じ写真を見ても、それぞれ、選択した回答が異なり、さらに、同じ回答を選んだ方々であっても、その理由は異なっているという事実から、人というものは、同じ状況であっても、ものの見方・とらえ方・感じ方は、それぞれ異なるものであり、そもそも、これが人間の認識であるということです。

 会場の皆様には、この体験から、いかに人の認識とは不確かなものであり、感じ方にも相違があるということを理解していただきます。

 このことからも、人との関係性の中で抱く他者への印象は、それぞれ異なり、思い込みや誤解も生じえること、他者を理解するということは決して簡単ではなく、完全ではなく、絶対的ではないことをまず理解して頂くことにしています。

人との「違い」は「間違い」ではない

 では、何故、このような「違い」があるのでしょうか?

 私たちは皆、今まで生きてきた人生のなかで多くのことを学んできました。幼い頃、両親から教えられてきたこと、周囲の大人から教えられたとこ、兄弟を通して学んだこと、友人や教師との関わりといった体験、あるいは書物やメディア、あらゆる情報から多くの学習をしてきています。そして、私たちは、人それぞれ独自の“自己概念”を形成してきました。「~こうあるべき」「~こうするべき」といった概念です。

 人生の体験・学習は、人の数だけ異なりますので、当然、概念もそれぞれ独自にもっています。他者に対する感じ方は、こうした自己概念というフィルターを通して認識しているため、人それぞれ、感じ方には違いがあるわけです。

 大切なことは、こうした人と人の「違い」は「違い」であって、決して「間違いではない」ということです。

 この人と人との「違い」を受け止め、前向きにとらえることで、心の成長を促します。個人レベルでは、似たような性格傾向の人とは、考え方や意見も合うことから、その関係性は心地よく、快適な状態が保たれるでしょう。しかし、それ以上の成長はなく、逆に、自分とは違う性格傾向の人と接することで、そこから学ぶことで、新たな考え方・とらえ方を身につけていくことで自分を高めていくことができます。

 組織レベルにおいても、同じ行動パターンをもつ人の集まりは、思考もワンパターン化する傾向にありますが、様々なパーソナリティーをもつ人材が集まることで、新たな展開を見出し、組織力を高めていくことが可能になります。

 こうした考えは、自分の考えを抑えることでも、自らを否定することでもありません。自らの行動パターンを大切にもった上で、様々な考え方やとらえ方を積み重ねることで、視野が広がり、あらゆる環境のなかでの対人関係におけるストレスをミニマムにしていくこととなっていくことを意味します。

 しかしながら、この“人と人との違い”は、時として、摩擦や衝突となって、ストレスを招いていくことは少なくありません。

 では、次に、そうした対人関係におけるストレスマネジメントについてお話しましょう。

カウンセリングケースから学ぶ自己コントロール

 では、実際のカウンセリングケースを通して、新たな認識を取り入れる方法をご紹介したいと思います。

 患者さんは、頭重感や首、肩の凝り・胃痛などの身体症状も現れ、睡眠困難から気分・意欲・集中力の低下を伴い、仕事上のミスも目立つようになっていたという30歳代・女性・OLでした。

 「これ以上無理しないで、休養をとった方がいいわ。みんなも心配しているから」と、同僚から言われたことがきっかけで、クライアントは強い不安を抱くようになったと言います。

 クライアントの言う不安とは、「同僚の発言から、私が関わることで周囲に迷惑をかけているのではないか。私は邪魔な存在だと周囲は感じているのではないか。このままでは、職場の中でも存在感を失ってしまうのではないか」というものでした。

 ここで、ものの見方・感じ方について、クライアントと共に、一緒に考えてみることにしました。

最初のクライアントの思考

 「同僚の発言から、私が関わることで周囲に迷惑をかけているのではないか。私は邪魔な存在だと周囲は感じているのではないか。このままでは、職場の中でも存在感を失ってしまうのではないか」

 これは、クライアントが最初に頭の中で生じる思考です。人は誰でも自分に降りかかる出来事を通して、何かを感じ、何かを思います。一番初めに頭の中で感じることや思う事、その多くは、その人の感じ方や考え方のクセでもあります。

“ものの考え方やとらえ方は不確かなものである”といったことを前提に、ここで、それに変わる様々な感じ方・考え方を挙げてもらいます。

それに代わるプラス面からの思考とは?

 最初に出た思考のほかに“プラス面に感じられる”考え方、あるいは“自分にとって楽になる”考え方はないかとクライアントに聞いてみました。

<クライアントの発言>
「同僚の言葉は、自分の状態を見て、気遣った配慮なのかもしれない」
「疲れている自分を心配してくれて言ってくれたのかもしれない」
「職場にうつ病になった人もいたことから、同じ事を繰り返してはいけないと思ったのかもしれない」
「頑張り続けている自分を、これ以上、見ていられなかったのかもしれない」

 このような新たな思考は、クライアント自らの中に生じたものです。まずは、「あなた自身の中に、そのような様々な考え方や感じ方があるのですよ」ということに気づいていただきます。

 こうしたプラスの思考がクライアントの中に存在しているにもかかわらず、それが顕在化されないまま、マイナス思考ばかりに縛られ、自らを苦しめていくケースが少なくありません。

 新たなプラス思考の取り入れ方を日常的に身につけ、繰り返し習慣化することによって、自らの新たな認識・行動様式となり、それは、あらゆる対人関係のなかでも楽な自分を見出すことが可能です。

 対人関係におけるストレスを上手にマネジメントして、この世にたったひとりだけの大切な自分を守り、エールをおくってあげて下さい。

 交流分析の言葉には「過去と他人は変えられない。変えられるのは自分と自分の未来である」と言っています。