トップページコラム女が医者にいいたいこと「初診の予約待ちが1年以上」というところもある児童精神科。その背景にある子どもたちの事情と医師の奮闘
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「初診の予約待ちが1年以上」というところもある児童精神科。その背景にある子どもたちの事情と医師の奮闘

Good Doctor NET 2010. 9. 7 掲載記事より

2010.09.07   21世紀医療フォーラム取材班 ライター 狩生聖子

心の病から発達障害まで。子どもに増える精神科領域の疾患に対応する医師たちは不足している。

「今すぐ死ぬ」と電話をかけてくる子どもに、
診療時間外も対応。

 夕刻の病院。すでに診療時間は終了しているのに、待合室はまだ大勢の人であふれている。そこは小児専門の精神科病院なので、幼児から10代後半の子どもたちが中心だ。
取材をお願いしているのは児童精神科医の著名な医師。来ていることを伝えて2時間以上。待てども、待てども一向に声がかからない。

 手術が長引いたり、患者が急変したりして、予定の取材開始時間を大幅に超えて待たされることはたまにある。

 「もしかしたら忘れられてしまっているのかぁ」と不安になっていた矢先、やっと声がかかった。時計はすでに夜の8時近く。

 「予約なしの人が大勢来てね。電話で『今すぐ死ぬ』なんていう患者さんもいたものだから……」。

 その言葉を聞いて、診察室に入って、30分近く出てこない女の子がいたことを思い出した。高校生くらいで、ちょっと派手目な、いまどきの女性。待合室にいたときからずっと泣いていた。でも、出てきたときには笑顔だったのが印象的だった。

 子どもの心の病気や発達障害が増えている。こうした中、専門家である児童精神科医に患者が集中している。初診の予約が1年待ち、なんていうところもある。3分間診療ではすまない患者への対応を考えれば当然だろう。近年、児童虐待が問題になっているが、虐待を受けた子どものケアをリードするのもこの分野の医師たちだ。

 治療は、投薬や心理療法にとどまらず、親への支援や指導(子どもに対する適切な接し方などを教える)、学校や行政などとの連携もあって、実に幅広い。子どものさまざまな相談にのることも多い。ある児童精神科医は、発達障害を抱える子どもが就職を考える時期に、「避けたほうがいい仕事、向いている仕事」などについてもアドバイスしているという。

 「子ども時代はさまざまな支援があるが、大人になってからはそれがない。厚生労働省の調査では成人のひきこもりの4人に1人に発達障害があったという結果が出ています。孤立させないためにも、子どもたちには『大人になっても困ったことがあれば来るように』といっています」。

 普段の仕事では、「○○で○○が治る」といった切り口で、外科的な治療法や薬の紹介をすることが多い。もちろん、すべての人がうまくいくわけではないが、劇的な治療例を挙げてもらうのはそれほど難しいことではない。患者が治るたびに、医師は手ごたえを実感できるだろう。

 しかし、児童精神科の分野はこうした医療とはかなり違う。結果がなかなか出ない。治療には手間がかかり、労働時間が長い。でも、私が出会った医師たちはみんな元気で、笑顔を絶やさない。子どもたちからパワーをもらっているんだな、と思う。そして子どもたちの未来を真剣に考えている。こうした分野に大変だけれど、多くの人材が育ってほしい、と子どもを持つ親としても強く感じるのであった。