トップページインタビューうつ病の啓発は、早期発見・早期治療につながる。 リワーク成功には、「リワーク・プログラム」の活用が重要
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うつ病の啓発は、早期発見・早期治療につながる。 リワーク成功には、「リワーク・プログラム」の活用が重要

第2回(2回連載)

2010.10.12   国立精神・神経医療研究センター総長 樋口輝彦氏

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター理事長 樋口輝彦 氏
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター理事長 樋口輝彦 氏

2010年9月、「うつ病患者のリワーク(復職)支援」「うつ病治療にかかわる医療者の情報交換促進」そして、「リワークの成功に向けて、行政への提言を行っていく」ことを目的に設立された『うつ病リワーク推進協議会』(主催:21世紀医療フォーラム)。
この協議会の特別顧問に就任された独立行政法人国立精神・神経医療研究センター理事長・樋口輝彦氏は、「精神疾患」「神経疾患」「筋」「発達障害」の4 つの領域を扱うナショナルセンターのトップである。
樋口氏は、「パニック障害、不安障害、睡眠障害、うつ病などの精神疾患は、誰もが罹患しうるコモンディシーズ(よくある病気)。これからは医療者、患者そして一般の人々も「精神疾患」に向き合うことの重要性を認識すべき」と語る。2回連載の第2回は、現代のうつ病の状況、最新のうつ病対策を中心にお聞きした。
(聞き手:日経BP社BPnet編集プロデューサー 阪田英也 構成:21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 原田英子)

現代のうつ病は、「患者の年代による違い」と「うつ病原因の捉え方」に特徴が

うつ病が増加しています。その原因をどうお考えでしょうか。また現代のうつ病には過去と違った特徴はあるのでしょうか。

樋口 複雑な背景を持っていて、単純には結論づけられませんが、2つの大きな要素があると思います。1つ目は、“いま増加しているのは、どの世代のうつ病なのか”ということに着目すると、その特徴が見えてくるということです。

かつて、うつ病は40~50代の病気でした。その患者は、どのような人たちかというと、企業でいえば、いわゆる「中間管理職」です。責任が重くなり、その責任を果たすために、“几帳面”で、“生真面目”に仕事に取り組み、“一生懸命”がんばった末に、だんだん力尽きていく。こうしたプロセスの中でうつ病が発症してくるというタイプです。これこそが、まさに「典型的うつ病」でした。

ところが、最近のうつ病は、40~50代のピークのほかに、もう1つ20~30代のところに大きなピークが出てきた。これらは、はたして同じうつ病なのかという疑問が当然起こります。最近話題となっている「現代型うつ病」や「非定型うつ病」は、ほとんど、若い世代のうつ病です。40~50代のうつ病が、時代とともに病像が変化して、現代型うつ病が出てきたのか。それとも40~50代の古典的なうつ病とは別のうつ病の一群が出てきたのか。その論争はまだ決着がついていませんが、私は個人的には、前者の考え方である“古典的なうつ病がシフトした”とみるのは、無理があると思っています。

なぜならば、薬の効き方1つとっても全然違います。もともとの40~50代のうつ病には、抗うつ薬が非常によく効きます。ですから、服薬と休息とで十分改善していく。ところが若い世代の「現代型うつ病」の患者には、なかなか薬が効きません。どうも性質が違うのではないかと思われます。

2つ目は、うつ病になった原因を患者自身がどのように捉えているかという点です。ここにも大きな違いがあります。かつてのうつ病の人は、“申し訳ない”“自分が悪い”と自責的になったものです。ところが、「現代型うつ病」の若い人たちは、“私がうつになったのは、あんたのせい”“会社が私をうつにした”というように、責任転嫁型、被害者型になってきています。

時代が変化したから、そのように変わったとは考えにくい。1つの可能性として、うつ病の診断基準が、1980年に「DSMIII」に変わったことがあるのではないかと思っています。基本的なところは変わっていませんが、「DSMIII」以来、うつ病の概念がかなり広くなりました。おそらく、このことにも関係あるのではないかと考えています。

“昔からうつ病はあったが、最近になってより広がりを見せている”ということですね。その社会的背景をどのように分析していらっしゃいますか。

樋口 これにも2つの背景があると考えられます。1つは、現代の非常にストレスフルな社会状況が、うつ病の発症を助長している。そのことで、以前ならうつ病にならずに済んだ人も、うつ病になるようになってきたということはあると思います。

もう1つは、“掘り起こし”だと思います。要するに、啓発が進んだおかげで、「うつ病とは何か」が、だんだん知れ渡ってきた。これまでは、「ひょっとしたら、私もうつ病かもしれない」と思った人が、「でも、精神科に行くのは大変だなあ」と、受診することをためらっていた。しかし最近では、「駅前にメンタルクリニックがあるから、ちょっと行ってみよう」と、仕事の帰り道に寄って、「眠れない」と訴える。それくらい、気楽に受診できるようになったということです。