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臨床心理士の国家資格の問題を解決し、チーム医療を実現する必要がありますね。

樋口 “現在の診療システムでいい”と思っている精神科のドクターは、誰もいないと思います。診療、治療のパートナーとして、臨床心理士を国家資格化することは、是非やらねばならないことです。

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そして、CBTに関連して、ぜひ言っておきたいことがあります。昨今のメディアには、「認知行動療法という素晴らしい治療法があるのに、なぜ日本ではやたらと薬ばかり使いたがるのか」という論調があります。でも、それは間違っています。エビデンスをしっかり見ていただくと、薬物療法と認知行動療法の効果はほとんど同じで、認知行動療法と薬物療法を併用すると、どちらか一方で治療するよりも効果は高いのです。

百歩譲って、精神療法だけでうつ病を解決するとしましょう。精神療法はCBTを例にしても、1回に最低30分かけて、最低10回、場合によっては20回30回と、非常に時間がかかる療法です。一方、薬物療法が奏功する患者は、2~3ヵ月で寛解します。だから、患者個々のニーズに応じて、どのような治療法を選択するかケースバイケースで考えていく必要があります。この点についての誤解を解いていくことも必要だと考えています。

樋口先生が“夢の4本柱”といわれた「トランスレーショナル・メディカルセンター」「臨床研究の専門疾病センター」、そして「CBTセンター」。新しい試みの4番目は何でしょうか。

樋口 「IBIC(アイビック:脳病態統合イメージングセンター)」という、脳の画像解析センターです。現在、「PET」「MRI「脳磁図」「SPECT」「光トポグラフィ」といった脳の画像関連のマシーンを、独法化にあたってすべて新しくすることができました。それをしっかり使って、診断と病態研究につなげていくためにセンター組織にして、人材を配置します。

これまでお話した「トランスレーショナル・メディカルセンター」、「臨床研究の専門疾病センター」、「CBTセンター」、そして「IBIC」の4つが揃うことで、当センターは精神・神経疾患領域の研究・治療の新しいパラダイムをつくることができます。

精神医学と神経学は密接に関連する学問領域なのですが、冒頭にも述べたように、この2つを総合的に扱う臨床研究と実践の医療機関は、世界でも極めてユニークかつ希少です。実はこのことがもう1つのポイントになると思うのですが、そのユニークなところをどうやって活かすかということがあります。

精神医学と神経学が対象にする病気は全く違いますが、「体の病気に伴ううつ病」に見るように、例えば当センターで診ていても、パーキンソン病の患者さんにはうつが多い。そして、その対処法はまだ完成されていません。それができるとしたら、おそらく精神と神経、両方を扱っている当センターならではでしょう。

もう1つは研究面です。これまでは、精神科と神経内科は、全く別方向を向いていました。しかし研究のアプローチからすると、お互いに非常に影響を与え合っているのです。脳の病気として捉えるならば、例えば、いずれも脳の神経伝達系に異常がある病気である。さらに、遺伝子は神経疾患の方が明らかになっていますが、精神疾患にも遺伝子が関係するものがある。その関係の仕方が違っていて、それは疾患をすぐには規定はしないものの、疾患になりやすさを規定しているとか……。そのような精神科と神経内科2つの領域の持っている知恵や、研究のアプローチを、補強し合い、提供していくことをやりやすくする環境づくりが必要だと思いますね。

第1回おわり(第2回に続く)

編集部注

*1「大規模臨床研究」
新薬の承認を得ることや新しい治療法の有効性を証明することを目的に医療機関で実施される研究のこと。特に前者は、「治験」と呼ばれる。

*2「コホート研究」
特定の地域や集団(コホート)に属する人々を対象に、長期間にわたってその人々の健康状態と生活習慣や環境の状態など、さまざまな要因との関係を調査する研究のこと。