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認知行動療法(CBT)のうつ病以外への応用にも力を入れていると聞いていますが。

樋口 ええ。あと2つ新しい試みを計画していて、それらは来年度(2011年度)の概算要求をしているところです。その1つが、「CBT(認知行動療法)センター」です。うつ病の治療を中心として用いられるのがCBTですが、これは今、うつ病に限らず、統合失調症、アルコール依存、ストレス関連のPTSD(心的外傷後ストレス障害)など、かなり幅広く用いられています。

CBTはこの4月から、保険診療として一部認められましたが、十分トレーニングを受けた医師が、1人の患者に対して16回以内という範囲内で、1回30分以上行った場合にはじめて420点つくという条件付きです。その研修を、当センターで実施するように、厚労省からの依頼がありました。

医師が患者に対して、認知行動療法を一人前にできるようになるには2日間程度の研修では不十分で、1~2週間の実地研修を重ね、スーパーバイズを受けなければ使い物になりません。当センターのCBTセンターでは、そこまでやりたいと思っています。さらに、CBTを行った場合と、行っていない場合とで、どう違いがあるのかという研究もします。

そして、実際に「認知行動療法クリニック」を想定した臨床をやります。まず、認知行動療法による治療のできる外来センターをつくって、将来はサテライト的に展開していきたい。当センターのある小平市は都心から離れていて、都心で受診したいというニーズに応えられません。そこで、しっかり研修を受けてトレーニングを積んだ医師を、新宿や池袋のサテライトクリニックに配置する。そこで、十分に面倒をみられなかった難治例は、小平のセンターへ来てもらう。これは私の夢ですが・・・。

どうしてこのような展開方法が必要かといえば、今回保険適用になったCBTには、“精神科医に限らず、十分に習熟した医師が行った場合”という条件が付けられているからです。これでは、実質的には非常に広がりにくい。精神科医が1人の患者に30分かけてCBTを行うということは、現実的にはほとんどありえません。うつ病患者の受診率が急増したことで、精神科のクリニックには患者さんが溢れていますから。

将来的には、臨床心理士がきちんとトレーニングを受けて、スーパーバイズを受けて、CBTを施療するというようになっていかないと広がりません。そのためには、まず“臨床心理士には国家資格がない”という問題を解決しないと、前に進めません。

これは精神科医に限りませんが、患者の溢れているクリニックでの3分診療が問題となっています。

樋口 精神科医は3分や5分診療しただけで、薬だけ出しているのかという批判があります。精神科医も好き好んでやっているわけではないが、そうならざるを得ない。1つにはそれだけ患者が増えたこと。もう1つは、クリニックを経営していく上で、それだけ診ないと採算が合わないことです。

医師が1人で、奥さんが受付事務をやって、小さな部屋を借りているクリニックなら、たぶん1日25人診ればなんとかなるかもしれない。ところが実際は、臨床心理士を雇い、場合によっては保健士、精神保健福祉士を雇い、かなり手厚くやらざるを得ない。本来は、患者のために手厚くするわけですから、それらをまとめて保険診療の対象にすべきです。

精神科は外国の場合もそうですが、精神科医が初診は別にして、1人の患者に対して30分も1時間もかけて治療しているところはありません。初診ではじっくり患者の話を聞いて、診断と治療の方針が決まり薬を処方する。その後は臨床心理士や保健士が、その専門性を活かして治療に当たる。そして再診では、医師が患者をアセスメントして、何が解決して、何がまだ解決できていないかを判断し、それを臨床心理士や保健士などの医療チームに反映する。精神疾患の治療は、まさにチーム医療なんです。