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身体疾患に伴う、うつ病に注目

国立精神・神経医療研究センターでは、精神疾患領域において「臨床研究」から「政策研究」「疫学統計」など、精神疾患にかかわるすべてをカバーしていると考えてよいのでしょうか。

樋口 精神疾患の主なものといえば、まず「統合失調症」が挙げられます。日本では、歴史的に「統合失調症」の患者については、ずっと入院中心でやってきましたが、それを“地域の中へ展開していく”、つまり、“患者が在宅で生活しながら通院して治療する”というノウハウを研究するチームがあります。

うつ病に関しては、バイオロジカルな研究と、もう1つ、これまであまり注目されていなかった身体疾患に伴ううつ病が、最近、大きな研究テーマとしてスタートしています。例えば、心臓疾患、糖尿病、そして、がん患者が罹患するうつ病。さらに、慢性腎炎などの子どものうつなど。さまざまな身体疾患にうつを伴うことがあるのです。そのうつがあるために、元の病気が治りにくいというエビデンスがあります。

ペースメーカーをつけていたり、心臓移植を待っていたり、そのような患者のストレスの大きさが、うつを招くのですね。その中でも特にがんが深刻です。

樋口 もともと、この研究テーマは、がんが先行してできたものです。がん医療にサイコオンコロジーという領域ができて、最近は、数こそまだ少ないが、それを専門にする教授も生まれています。「身体疾患とうつ」。そこには、これまで余り注意が向けられてきませんでしたが、実は、医療経済的にみても、相当それは大きなマイナスです。ようやくそこに注目するようになってきました。

その他にも、当センターで扱っている研究テーマは非常に幅広いものがあります。例えば、現在大きな問題となっている「発達障害」を中心にした児童精神あるいは小児神経の領域。これも社会問題になっている「薬物依存」「心身医学」「自殺」。そして罪を犯した精神疾患者に、どう対応すればいいかを研究する「司法精神医学」分野などです。

「薬物依存」で怖いのは、日本の健康保険制度下で、1週間のうちに都内23区の病院4ヵ所で精神安定剤をそれぞれ1ヵ月分ずつ貰ってくることが、1人の保険証で可能ということがあります。向精神薬についても同じことがありうるわけですね。

樋口 あり得ます。昔は1回の診療時に2週間分しか出せなかったのが、今は1ヵ月分処方できます。2週間ごとに受診して薬をもらうために、仕事を休まなくちゃいけないのは、せっかく社会復帰して仕事に就いたのに、いろいろな意味で会社との関係がうまくいかなくなったりする。だから安定している人には長期で出していいという発想だったのに、それを逆手にとって悪用する人が出てくる。

それを取り締まるにはどうしたらいいか。処方制限すべきだという議論もありますが、それはおかしいと私は思います。例えば、鉄道自殺が増えたら鉄道を廃止するでしょうか。 処方薬を二重三重に出すのを防ぐ最も簡単な方法は電子カルテです。同時に、誰がどこでどのような治療を受け、どのような薬を処方されたかを明らかにするために、「国民背番号制」の導入や「電子カルテの共有化」を実現する。これらが、これから取り組むべき重要な課題といえます。