トップページインタビュー「精神」「神経」「筋」「発達障害」の4 つの領域をカバーするナショナルセンター 「国立精神・神経医療研究センター」。 総長の描く“夢の4本柱”
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「精神」「神経」「筋」「発達障害」の4 つの領域をカバーするナショナルセンター 「国立精神・神経医療研究センター」。 総長の描く“夢の4本柱”

第1回(2回連載)

2010.10.04   国立精神・神経医療研究センター総長 樋口輝彦氏

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター理事長 樋口輝彦 氏
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター理事長 樋口輝彦 氏

2010年9月、「うつ病患者のリワーク(復職)支援」「うつ病治療にかかわる医療者の情報交換促進」そして、「リワークの成功に向けて、行政への提言を行っていく」ことを目的に設立された『うつ病リワーク推進協議会』(主催:21世紀医療フォーラム)。
この協議会の特別顧問に就任された独立行政法人国立精神・神経医療研究センター理事長・樋口輝彦氏に、「精神疾患」「神経疾患」「筋」「発達障害」の4 つの領域を扱うナショナルセンターのトップの立場から、国立精神・神経医療研究センターの役割、現代のうつ病の状況、最新のうつ病対策について伺った。
2回連載の第1回は、樋口氏が総長を務める国立精神・神経医療研究センターの役割をテーマにお聞きした。
(聞き手:日経BP社BPnet編集プロデューサー 阪田英也 構成:21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 原田英子)

「研究所」と「病院」が一体となって達成する
ナショナルセンターの使命

「国立精神・神経医療研究センター」とは、どのような医療機関なのでしょうか。

樋口 いわゆるナショナルセンターは、「国立がん研究センター」を筆頭に、日本で6つありますが、3番目にできたのが当センターです。国立の医療機関として、国民の税金を使う以上、“一般病院ではできないことをやる”“まだできていないことをできるように研究開発する”、これがナショナルセンターのミッションです。

例えば、精神疾患や神経疾患に限らず、現在、私たちが持っている治療手段は、日本全国すべてのドクターが共有し、これを駆使して治療しています。しかし、その治療手段で、どんな疾患も克服し治療できるという段階には至っていません。例えば神経疾患では、原因となる遺伝子がやっと見つかってきましたが、新しい治療方法を見つけ出し、それを臨床の場に提供していくというシステムがない限り、すぐに治療が頭打ちになってしまいます。

この頭打ちを解決するために、ナショナルセンターには「病院」と「研究所」が併設されています。この意味は、「研究所」で新しい治療法などのシーズが見つかったら、それを臨床応用へ持っていく、そのために「病院」があるということです。

当センターでも他のナショナルセンターと同様に、当該分野の研究開発を行い、新しい治療法を見つけ出し、診断技術を開発します。そして、最終的に新しい治療法を確立したら、それを全国展開し、どこでも同じ治療が受けられるように、均霑 (てん)化していく。これがナショナルセンターとしての使命です。

ナショナルセンターにおいて、「病院」と「研究所」は対等な関係ということでしょうか。

樋口 そうです。「病院」は「研究所」の下にあるという発想では、「病院」に元気が出ない。『臨床研究』という言葉があるように、「病院」という臨床の場からも、当然、疾患そのものやその治療法に疑問が湧いてきます。それを「研究所」に持ち込んで、その疑問を解決するといった双方向性がないと発展しません。

「研究所」において大切なことは、いかにして優れた研究者を確保するかです。研究を先へ先へと進めていくためには、若い研究者のマインドとパワーが必要です。そのために、それなりの力量のある人たちを、全国から公募しています。それと同時に、若い人たちを育てる仕組みづくり、研究助成、指導、さらにはエスタブリッシュした研究者たちが世界に挑戦していけるようなシステムの構築も行っています。

全国公募するとき、精神疾患にかかわる研究所で公募する対象者は、MD(医師)なのでしょうか。

樋口 可能な限り、MDを取りたいと考えています。というのは、どうしても臨床が分かった上で研究をすることが必要だからです。「神経研究所」では、ベーシックサイエンスを中心とした研究を行うので、MDだけでなくPhDも、ということはありますが、疾患そのものの研究に取り組む場合は、やはり病気が分かっているMDを求めることになります。

これは精神疾患領域も同じですが、必ずしも絶対ということではない。例えば、当センターの精神保健研究所の部長にもMDではない人もいます。もともと精神保健研究所は、今でいうと厚生労働省の精神保健福祉課との関係が深い研究所だったという経緯があって、ある意味ではシンクタンク的な役割を果たしてきました。そういう部門では、国の政策にかかわる研究や、疫学統計的な研究をしているわけですから、必ずしもMDである必要はありません。