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良いストレスと悪いストレス

Good Doctor NET 2009. 5. 11 掲載記事より

2009.05.11   水木 さとみ

 複雑な現代社会を背景に、心理・社会的ストレス(日常の出来事から生じるストレス)は、年々増加の一途をたどっています。

 では、もし、このようなストレスがなくなったら、一体どうなってしまうのでしょうか? アメリカのある心理学者が興味深い実験をしました。何名かの被験者に協力を得て、各自、個室に入ってもらいます。個室は、温度が一定で匂いも音もなく、うす暗い部屋に一定時間過ごしてもらいます。

 つまり、全く刺激のない環境(ストレスのない環境)を設定しています。結果は、大半の被験者は、体温機能の調整がうまくいかないことが明らかになりました。人は寒いと鳥肌が立ちます。逆に暑いと汗が出ます。けれども被験者の多くは、そういった反応を示さず、室温に関係なく調整機能が鈍っていました。

 また、暗示にかかりやすいことも明らかになりました。個室から出てきた被験者に「あなたはころぶ!」と大声で叫ぶと、被験者の多くは、ひざはガクッとしてよろけてしまったり、中には、実際にころんでしまう者もいたということです。

 この実験は、刺激のない状況(ストレスのない状態)にずっと置かれていたら、生命の危険にも繋がっていくとことを物語っています。ある意味、ストレスは人間が生きていく上で大切な要因であるようです。

 実は、ストレスには「良いストレス」と「悪いストレス」が存在します。言い換えれば、自らの気持ちとコントロールの仕方で、ストレスの質を決めるといっても過言ではないでしょう。

 例えば、何かをやり遂げようという目標をもっていた時、新しいことへの挑戦は必ずストレスを伴います。しかし、目標に向って頑張ろうとする意欲や気持ちの高まりは、やりがいとなってエネルギーに変わっていきます。たとえそれがうまくいかなかったとしても「何が足りなかったのだろうか」「どうしてそうなったのか」「この出来事の意味は、今後、成功させるために何を物語っているのだろうか」といった感じ方や考え方は、その人の学習効果となり、自己成長をしていく手段に変わります。

 「良いストレス」とは、このように自分を高めていく過程に、良い刺激となって関わっていきます。

 一方、「悪いストレス」とは、辛い状況のなかでも「やらなくてはいけない」「頑張り続けなくてはいけない」と自分を強迫的に追い込み、自らの意思とは無関係に、過剰行動を続けた延長線に生じるストレスです。

 その状態を続けていくことで、心は悲鳴をあげ、やがて、そのサインが身体に表れます(身体化)。倦怠感、不眠、首や肩の凝り、頭重感や頭痛、耳鳴りやめまい、顎の違和感や痛み、胃痛、肌トラブルなど、様々な症状が出現していくのです。

 ここで、ストレスに関する興味深い実験をご紹介しましょう。カゴに入れられたネズミ、輪の中をクルクルと可愛らしく走り回っている光景をよく目にします。このネズミは、自ら勝手に走っている分には、1日8キロメートル走り続けても特に異常は起こしません。

 けれども、そのネズミを自分で走らせるのではなく、こちらが動かした輪の中を強制的に走らせると、2キロメートルの時点で高血圧を起こします。これは、ストレスが原因で生じる反応です。この実験からも分かるように、自らの意思で走るネズミは8キロメートル走ることができても、ネズミの意思とは無関係にやらされる行動(しなくてはいけないといった行動)になると2キロメートルの時点でドロップアウトしてしまうのです。

 言い換えれば、自発的な行動は、やらされる行動の4倍もの力が発揮できるということを物語っています。

 このことは、私たちの気持ちと行動にも関係します。他者からの指示から動かされるだけがストレスとは限りません。自分に対しても強迫的な気持(~しなければならない)が強まって行動している状態は、輪の中を走らされているネズミと同じ状況を作りだします。

 自らが自らを強制的に走らせ続け、辛い状態へと導き、悪いストレスへと陥ってしまうのです。こうした状況を招かないためにも、疲れた時には、自分の心と向き合い、心の声を聴いてあげて下さい。

 “輪の中を走らされているネズミのように、自分が自分を強制的に走らせてはいないだろうか?”もし、そのような状態であると感じたら、自分の能力は発揮できていない状態であることに気づいて下さい。

 目標を達成するためには今のままのやりかたでは不可能でしょう。このような状況のなかで、優先順位として、今は何をしたら良いのか? 何をしてはいけないのか? ということを段階的かつ明確に整理してみてください。

 大切なことは、決して焦らないことです。焦らないことが結果的に良い状態を作り出します。焦りや不安は思い通りにならなくなってしまったり、見通しの立たなくなった状況下に生じる感情です。段階的な目標を立て、無理なく進んでいくことで、必ず見通しが立っていくものです。

 さらに、時には「自分を許す=開き直る」ことも重要です。開き直るということは諦めることではありません。辛い状況の中では「今はここまでで“良し”としよう!」と自分を許す気持ち、認めてあげる気持ち、開き直る気持ちをもつことです。輪の中を走らされるネズミにならないために、常に心と身の状態に気づき、その上で、気持ちを上手にコントロールしていくことが大切です。

 感じ方や気分も変わり、かえってスムーズに進んでいくことができます。ストレスを楽しむ気持ちが、きっとあなたの人生を豊かにする生活習慣を築き上げていくことでしょう。