石田淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 地方の国立大学で化学を専攻していたR氏は大手生活資材メーカーに就職し、花形ともいえる商品開発部に属していました。その能力を買われ30代前半に課長に昇進。ところが、傍目には順風満帆とも見えていた38歳の昨年秋、退社しました。

 理由は「サラリーマンでいることに危機感を覚えた」からでした。R氏の会社では、ここ数年アウトソーシングが進んでおり、管理部門を中心に正社員がどんどん減ってきています。たとえ商品開発部門といえども、例外ではないとR氏は思ったのです。

活躍できたのは会社という後ろ盾があったから

 実際に、他業種企業とコラボしたり、社外技術者を期間限定で契約したり、従来のやり方とは異なった形で商品開発が進められることが増えました。このままでは、いずれ自分の居場所がなくなるような焦燥感がR氏の決断を急がせました。

「僕の専門性を生かして独立するには、まだ30代の今が限界だ」

 ちょうど同時期に、大学時代の友人が起業したことも影響したようです。

 退社したR氏は、自分一人の会社をつくり、これまで温めてきたけれど社内で発表することのなかったいくつかのアイデアを企画書にまとめ、業界企業を中心にセールスしました。どれも「これまでの会社だったら絶対に通るであろう」と思われる自信作です。

 しかし、思うようにはいきませんでした。どこの企業も前向きに話は聞いてくれるのですが、最後はビジネスとして成立しないのです。

 これまでR氏が活躍できていたのは、会社という後ろ盾があったからです。独立するにはまだまだ準備不足だったようです。