池照 佳代
アイズプラス 代表取締役

『グローバル時代の人事コンピテンシー 世界の人事状況と「アウトサイド・イン」の人材戦』
『グローバル時代の人事コンピテンシー 世界の人事状況と「アウトサイド・イン」の人材戦』
デイブ・ウルリッチ、ウェイン・ブロックバンク、ジョン・ヤンガー、マイク・ウルリッチ 著 / 加藤 万里子 訳 / 日本経済新聞出版社 / 3,780円(税込) / 406ページ

「変わりゆく世界で、今、人事に何が求められているのか?」

 この問いに応えることが本書の目的である。世界各国の人事プロフェッショナル達を対象に、25年にわたる人事コンピテンシー調査(HRCS)の第6回目となる結果を基に書かれた。2万人の人事プロフェッショナルを対象に、世界9大地域のビジネスと人事について、各地の人事プロフェッショナルが現地調査にあたり執筆を担当している(残念ながら、日本はこの対象地域にはなっていないが…)。

 今回、2012年の調査では、人事コンピテンシーの6つの領域が特定されている。(1)信頼される行動家、(2)戦略的ポジショナー、(3)組織能力の構築者、(4)チェンジ・チャンピオン、(5)人事のイノベーター/インテグレーター、(6)テクノロジーの提案者 ―― である。それぞれの領域について、時代やビジネスの変化とともに調査結果に基づく検証と考察が記されている。

 例えば、ウルリッチ氏の1997年の著書『MBAの人材戦略』で解説されたのはチェンジ・エージェント(変革の行為者)であったものが、今回は「チェンジ・チャンピオン」(変革の擁護者)と紹介されている。これには意図的な理由がある。エージェントは誰かの代理人として行動するのであり、変革の「当事者」ではないということである。変革をスタートし、なおかつ最後までやり通す人たちという意味で「チャンピオン」という言葉をあえて選んでおり、現在我々に期待されているのが「チャンピオン」のイメージである。この領域ひとつにも11の知識と行動が特定されており、大きくは「変革を起こす」と「変革を維持する」に分類されている。

 この調査から明らかになったこととして、業界の変化のスピードを理解することよりも、その変化に対応し、顧客の要請に応じることができる能力が重要だとしている。また、グローバル人事の未来として、人事のプロは世界中どこに行っても6つの各領域の効果的なコンピテンシーを発揮すべきだと示しながら、特に世界中で共通しているハイパフォーマーとして認識されるための領域も特定されている。そのために人事のプロとしてどんな開発をすべきかの具体的な方策も示されており、キャリア開発にもつながる内容になっている。

 世界中の人事のプロが何を感じ、どのような視点と思考をもって仕事をしているか ―― 人事のプロなら誰でも一度は気になることである。人事のプロとしてグローバルに活躍していきたい方、グローバルな環境で多様な人材と成果を出していくミッションを持つ方、また今後そのようなキャリアに就きたい方には、ぜひ参考にしていただきたい一冊である。

関連図書

『MBAの人材戦略』
デイビッド・ウルリッチ 著 / 梅津 祐良 訳 / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,398円(税込) / 318ページ