リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

「10年前、君はなにをしていた?」
「10年前? そうね…。(微笑みながら)ああそう、歯の矯正をしていたわ。あなたは?」

 この台詞のやりとりをご存知の方はいらっしゃるでしょうか。

 名画、『カサブランカ』に出てくるワンシーンです。恋に落ちたリックとイルザの会話なのですが、そんな会話の中に「歯の矯正」の話がでてくるなんてちょっと意外ですよね。でも当時からアメリカでは、美しい歯並びはエリートや上流階級の人々の「常識」だったことが分かるでしょう。

出世と歯並び

 アメリカ、特にニューヨークのようなビジネスの中心都市では、次のような人はエリートにはなれないと言われています。太った人、タバコを吸う人、そして歯並びの悪い人です。つまり、これらは内面も外見も含め、自己管理ができていない証拠であり、自己管理すら上手くできない人はビジネスで成功するはずがないだろう、と見られるというわけです。

 ホンダの創業者、本田宗一郎さんは、ホンダの海外拠点のトップを日本に呼び戻して、彼らに歯の治療をさせたそうです。欧米でのビジネスを成功させるためには、歯の身だしなみが不可欠だということに気がついていたのでしょう。

 ジム通いも同様です。マンハッタンのスポーツジムは、出勤前の早朝、勤務時間後の夕方、そしてお昼休みの間も非常に混みあいます。良い仕事をするためには強靭な体とメンタル力が必要なことはもちろんのこと、やはり、人は第一印象も大事。自己管理をきちんとしていますよ、という外見が整っていたほうが出世にも有利、ということなのでしょう。ですからエリートビジネスマンほどジムに通って体を鍛えています。

 歯並びを美しくすることも、体を常に鍛えることも、アメリカのエリートビジネスパーソンにとっては「常識」の自己管理なのです。