中村 文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

『反転授業-基本を宿題で学んでから、授業で応用力を身につける』¥
『反転授業-基本を宿題で学んでから、授業で応用力を身につける』
ジョナサン・バーグマン、アーロン・サムズ 著 / 山内祐平、大浦弘樹 監修 / 上原裕美子 訳 / オデッセイコミュニケーションズ / 1,620円(税込) / 224ページ

 「反転授業」というのをご存じだろうか。2000年ごろから主張されはじめ注目されている概念で、

「説明型の講義など基本的な学習を宿題として授業前に行い、個別指導やプロジェクト学習など知識の定着や応用力の育成に必要な学習を授業中に行う教育方法」(p.3より引用)

のことである。それも学校の授業が、である。小・中学校、高校はもちろん、大学の授業にも広がりを見せている。

 その広まりに貢献したカーン・アカデミーは有名である。また、例えば、スタンフォード大学医学部では2012年に一部の授業をオンライン学習に切り替え、対面授業では応用を中心とした対話型の活動にしたところ、出席率が30%から80%に向上した。また、サンノゼ州立大学では同年マサチューセッツ工科大学のコースを活用した反転授業を実験的に行い、40%の落第率を10%に低下させたといった事例もある。

 さらに、MOOC(大規模公開オンライン講座)が広がりを見せているなど、目覚ましい勢いで展開している。先生が前で講義をし、板書し、学生が聞いて書き写す時代は終わっている。

 「反転授業」というのは教師に焦点を置くのではなく、学習者と学習に焦点を置く考え方である。なので、特定の教え方の手法を指しているわけではなく、これが正しい反転授業のやり方であるといった方法論ではないという。言い換えると、学習内容や学習者によって様々な方法を創意工夫していく可能性がある。そのメリットはというと、生徒が先生を「一時停止」「巻き戻し」できるため、多忙な生徒やつまずいている生徒を助けたり、様々な学力の生徒に対応できたりする。

 また、教室での授業のあり方が双方向になり、生徒同士のインタラクションを増やし、真の個別化をもたらすことができる。何より、生まれた時からインターネットがある時代に育った世代にとって、パソコン、スマートホン、タブレットなどまったく抵抗なく、むしろ使わないことがかえって不自然なほど馴染みのあるツールで学習ができるのである。

 教える側にとっては簡単な変化ではないことは容易に推測できる。だが、「学びが教える者の手ではなく学ぶ者の手にあるとき、真の学習は生まれる」。そしてこの動きが、学校だけに留まる理由はどこにもないと思われる。研修のあり方を根本からデザインし直す日はすぐそこまで来ているかもしれない。

関連図書

『大学教員のためのルーブリック評価入門』
ダネル・スティーブンス、アントニア・レビ 著 / 佐藤浩章、井上敏憲、俣野秀典 訳 / 玉川大学出版部 / 3,024円(税込) / 180ページ