清宮 普美代
株式会社ラーニングデザインセンター 代表取締役

 最近、とても久しぶりに読書輪読会に参加しました。日曜日の午後に数人が集まって本について語り合う機会は、いつも時間貧乏な私からするとなんだかとてもリッチな時間の過ごし方でした。そこで私がテーマとしてとりあげた本は、大学時代の恩師が書いた『おとなが育つ条件 ―― 発達心理学から考える』(柏木恵子著、岩波新書)。大学生の時に心理学専攻だった私にとって、「発達するのは子どもだけではない、人は生涯発達する」という先生の言葉はいまでも印象に残っています。そして大人もまた社会のなかで「発達」していくということは、自分自身がまさにいま仕事として取り組んでいることでもあります。

フレームワークをつくると同時にそれを打破する

 大人が育つ条件を考えてみると、それは「体験から学ぶことができる」ことだと思います。そして体験を学びにかえるのは、自己と他者からのフィードバックです。もちろん自ら体験を振り返ることも重要ですが、大人の学習においては他者からのフィードバックが得られることが非常に重要な要素になります。そして、その他者から豊かなフィードバックを受けることができる社会的ネットワーク、関係性を構築していくことが大人の発達プロセスでもあるのです。

 大人では、経験を積み重ねていくことで自分なりのフレームワーク(枠組み)、つまり自分の考えの前提となる思考、価値観、信念といったものがつくられていきます。この枠組みがあるからこそ新しい情報が適切に処理されるのです。もしこうした枠組みが未成熟な状態であれば、体験は適切に扱われずに未消化で終わってしまい学習につながりません。しかし、大人にとってもっと厄介なことは、発達が進むにつれてその形づくられた枠組みそのものが新しい学びを逆に妨げるという事態がでてくることです。ですから大人にとっては、フレームワークをつくると同時にそれを打破することが必要になってくるのです。これは常に学び続けることの神髄、つまり生涯を通じて新しいことを学び、成長できるか否かの鍵かもしれません。

 また、マルコム・ノールズによると大人の学習は「PMARGE」といわれる特徴を持つといわれています。これは以下の特徴のそれぞれの頭文字を取ったものです。

P:Practical(実利的)
M:Motivation(動機)
A:Autonomous(自律的)
R:Relevancy(関連性)
G:Goal-oriented(目的志向性)
E:Experience(経験)

 これらは体験を自分のものとする際の条件と言い換えることできると思います。職場でOJTが機能している時は、まさにこれらの条件が満たされている時といえるでしょう。逆に機能しない時は、これら条件のどこかに不足があるということです。