中村 文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

『レジリエンスビルディング ―― 「変化に強い」人と組織の作り方』¥
『レジリエンスビルディング ―― 「変化に強い」人と組織の作り方』
ピースマインド・イープ株式会社 著 / 英治出版 / 2,582円(税込) / 208ページ

 「レジリエンス」 ―― 。耳慣れないという方も少なくないであろう。しかし、人事・組織開発・人材開発に携わる方はぜひ知っておきたい言葉である。

 言葉の意味としては「立ち直る力」「回復力」。人事的なコンテクストで言えば、突然の変化、しかも予測していなかったようなことが起こったとき、その変化に対する強さや対応力、ストレス耐性などを意味することが多い。個人レベルで見るとストレスによるメンタルの不調、組織レベルで見ると大災害や景気動向やビジネス環境の大きな変化などの逆境を乗り越えること、などがイメージしやすいだろう。本書では、そうしたネガティブなことが起こったときにどう対応するかという対処療法にとどまらず、変化に対する強さを鍛えておくことで、何かが起こっても動じない個人・組織をつくっておく考えを紹介している。

 研究によると、生まれながらにレジリエンスの高い人たちがいる一方で、レジリエンスは意識して習得できるスキルでもあるという。社員のレジリエンスを高めるプログラムを導入した企業の中には、参加者の自己効力感、ワークライフバランス、仕事への満足度、やる気や楽観的な考え方の増加などに大きな変化が見られたケースもあるそうだ。

 そうしたプログラムでは、レジリエンスを強化する要素を、信念、人間関係、考え方、専念する力、自己コントロール、良い習慣、の6つに集約しているという。個人レベルでこの6つを強化していくことが、結果として組織レベルのレジリエンスの強化になる。そして、組織としてのレジリエンスを考える際には、「組織のウェルビーイング」(組織の人々の心・身体・仕事の調和がとれていて、健やかな状態にあること)と「リスク」を指標とする。

 具体的な方法論に関してはぜひ本書をご参照いただきたいが、このレジリエンスの強化が人・組織にとって大切さを増していることは間違いないであろう。先日参加したATD(Association for Talent Development 、旧ASTD)のカンファレンスの基調講演で、ハフィントンポストのArianna Huffington氏が、成功のために大切な要素の一番目に挙げたのも、「健やかであること」であったことは単なる偶然ではないと思う。

関連図書

『Thrive:The Third Metric to Redefining Success and Creating a Life of Well-Being, Wisdom, and Wonder』
Arianna Huffington 著 / Harmony/1,971円(税込) / 352ページ