文化や風土は変えられるもの?

 しかし、(1)についてはいかがだろう。仕事重視の考え方が管理者のみならずその部下にも浸透していて、残業を減らすように要請してもなかなか長時間労働が改善されない職場もある。結果としてメンタルヘルス不調者が何人も発生し、その対応に頭を悩ませた経験を持つ人事・労務担当者もいるだろう。

 定期健康診断の際、従業員に何度も繰り返し受診を働きかけても受診率が上がらず、無力感にさいなまれた担当者もいるはずだ。少なくとも日本では、健康を大切なものと考える文化や風土のない組織に、健康重視の価値観を植えつけることは決して容易ではない。

 しかも(1)は、健康経営が効果を上げるかどうかを左右する極めて重要な要因だとされている。そもそも、組織に健康を重視する文化や風土があれば、会社が特に手を打たなくても従業員が自主的に健康の維持・増進に取り組み、健康度の向上が期待できる。

 「肥満の社員は出世できない」などと耳にすることもあるだけに、健康重視の考え方が米国の企業社会の底流に潜んでいるからなのかもしれない。日本の常識がグローバルでは必ずしも通用しないことを知り、国際シンポジウムに参加した意義があったと感じた。

井上 俊明(いのうえ・としあき) 日経トップリーダー編集委員、健康経営フォーラム
井上 俊明

 日経BP入社後25年近くにわたり、医療・介護分野を取材。1998年から5年間日経ビジネス編集部に所属し、税金、健康保険、年金などを受け持つ。2007年社会保険労務士登録。現在、中小企業や女性向けの媒体に労働関係のコンテンツも提供している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。