井上 俊明
日経BP社健康経営プロジェクトプロデューサー、日経ヘルスケア編集委員

 3月6日、7日の両日、慶応義塾大学のビジネススクールなど、世界のビジネススクール6校が参加した国際フォーラムが横浜市内で開催された。「ビジネスと社会の十字路としての健康とヘルスケア」が大テーマで、初日は「健康な従業員、健康な企業」、すなわち健康経営をテーマにした講演やパネルディスカッションが行われた。

 最初に講演したのは、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京オフィスの上級共同経営者、アクセル・バウアー(Axel Baur)氏。同氏はドイツやインド、さらにはGEのようなグローバル企業の例を挙げて、世界における健康経営の潮流を紹介した。

 続いては、同氏のほかブラジルや米国のビジネススクールの教授が加わったパネルディスカッション。従業員の健康維持・増進に企業が果たすべき役割や、ある国の企業が持つ健康プログラムをグローバル化できるかなどについて、フロアーからの発言も含め、活発な討論が行われた。

「生活習慣病はうつる」に納得

 その後、三つの分科会に分かれてパネルディスカッションが開催された。記者が取材した「従業員の健康戦略の実行」の分科会では、日立製作所が作った減量プログラムの内容と成果や、米国のヘルスケアIT企業、サーナー(Cerner)社が従業員向けに提供している様々な健康プログラムが紹介された。

 これらの実践報告以上に記者の興味を引いたのが、この分科会の最後に講演した米国ダートマス大学のスコット・ワラス(Scott Wallace)教授の発言だ。以下にそのうちのいくつかを引用しよう。

(1)「(大切なのは)組織の中の健康の文化・風土を変えること。これはすぐにできる」
(2)「2型糖尿病をはじめとする生活習慣病はうつる」
(3)「起きている時間の半分は職場で過ごすのだから、(従業員の健康に及ぼす)職場の影響力は大きいと認識する」
(4)「組織の健康づくりに大きな影響を及ぼすには、目に見えるリーダーが必要」
(5)「(健康づくりには)楽しさが必要。チームで競わせるといい。インセンティブだけ与えて罰は与えないようにする」

 これらの中には、(3)、(4)、(5)など、健康経営に取り組むスタッフにとって、当然と思われる指摘が含まれている。言うまでもなく糖尿病は感染症ではないが、勤務の都合で食事時間が不規則になりがちな職場などの例を思い浮かべれば、(2)についても「なるほど」とうなずく読者は少なくないだろう。