業務上の傷病については、労働基準法により、療養中とその後30日間は解雇が禁止されている。しかし、業務外で発生した傷病(私傷病)についてはこの規定は適用されない。有給休暇を使い果たし休職期間が終了すれば、たとえ療養中であってもその社員は退職(解雇)になる。

 これに対し、がんをはじめとする私傷病で闘病する社員を救おうと、有給休暇や休職制度とは別に「病気休暇」の制度を設ける企業もある。厚労省が昨年11月に公表した「2013年就労条件総合調査」によれば、4211社(本社の常勤労働者数が30人以上)のうち22.4%が「病気休暇制度」があると回答した。

病気休暇で対応しにくい疾患も

 「従業員1000人以上」では、病気休暇のある企業は35.5%にのぼる。だが、従業員数が少なくなるにつれてその割合は低下している。1回当たりの最高付与日数も、全体の平均190日に対して従業員数100人未満の平均値は168日。休職制度の有無と同じく、規模による差が目立つ。

 病気休暇制度が、がんなどの私傷病と闘う社員の心強い味方になるのはもちろんだ。入院・手術やその後の療養のための1カ月とか3カ月といった一連の欠勤は、病気休暇でカバーできるだろう。

 しかし、がん一つ取っても、部位や悪性度・進行度によって治療の方法や期間は様々だ。抗がん剤投与後、しばらく体調が悪くなるがん患者はめずらしくない。定期的に抗がん剤を打つ必要がある社員だと、例えば3週間ごとに1週間欠勤するパターンが何年も続くケースがあり得る。

 こうした長期にわたる間欠的な欠勤の場合、休職制度の適用にはなりにくい。一方病気休暇制度では、日数が足りなくなる可能性がある。

 先に紹介した休職期間を通算する規定は、企業を守るために導入が進んだものだ。だから今度は、病気やケガで長期間会社を休まざるを得ない社員のために、休職・休暇制度の見直しを図るべきではないだろうか。

 高年齢者雇用安定法の改正も行なわれ、高年齢の社員の増加が確実視される現在、その必要性はなおのこと高まってきている。

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井上 俊明(いのうえ・としあき) 日経トップリーダー編集委員、健康経営フォーラム
井上 俊明

 日経BP入社後25年近くにわたり、医療・介護分野を取材。1998年から5年間日経ビジネス編集部に所属し、税金、健康保険、年金などを受け持つ。2007年社会保険労務士登録。現在、中小企業や女性向けの媒体に労働関係のコンテンツも提供している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。