安田 結子
ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ・ジャパン・インク 日本支社代表

安田:弊社がアセスメントをする際にインタビューとレファレンスをとりますが、その前準備として行動心理学のテストを行います。心理学でその対象者の「好みの行動」を把握した上で、経験値で作られるものがコンピテンシーだと考えています。人間の本質を見抜くのは難しく、客観性を保つためには、科学的な根拠に基づくアセスメントが重要だと思っています。このことについて、竹内先生はどう思われますか。

竹内:私は両輪だと考えています。ある意味では心理テストも、サンプルに裏づけられ、標準的に派生するものがあると思います。80%の人はこのカーブに入るとなる。一つの指標としてなら、やる方がやらない方よりはいいでしょう。ただし、それはあくまでバックグラウンドのデータだと思っています。

心理テストは現場と合わせてみる

 ハーバードの強みは全てを2×2で説明しようとすることです。もしかしたら心理テストもタイプとしては16くらいあるとしても、まとめるとこの位シンプルになっていると良いかもしれません。日本人は血液型分類が大好きな人種で、ほとんどそれで人を判断してしまいます。お酒を飲みながらも「やっぱりお前B型か」となります。ただし、それは日本くらいですが…。その延長線が心理テストだと考えています。複雑すぎるといけないと思います。あれだけ血液型分類に反応のよい国民なので、心理テストも日本用に調整すれば「なるほどね」となるのではないかと思います。

 ただし、やはり現場でどう動くかを見ることは必要で、両輪だと思います。私も色々なエグゼクティブ・プログラムを行っていますが、その中で教えている内容に、「賢いリーダー」として6項目があります。ある日本企業でやってみて、「6つの内どれを実行していますか」と聞くと、「yes」の数が、平均4.5位でした。つまり、6つの要素中、四捨五入すると5つ位はできていると自信をもって答える。次に「スティーブ・ジョブズはどうなの?」と聞くと、彼の平均は3.8でした。そこで、「皆さんはスティーブ・ジョブズより賢いリーダーということでしょうか?」と言うと、彼らはハッとします。そうすると「もう1回やり直させてください」となり、「前回はこの項目がよくわからなかったので少し適当にやった」と言いだし、2回目は自己評価が下がります。心理テストは複雑になりすぎている傾向があると思います。

安田:心理学をベースに「好みの行動様式」を分析するのは、人間の行動には予測しきれない部分があると考えるからです。予測不可能な未来や将来において、どのような行動をする人間かを知っておく必要があると思っています。ただ、心理学はあくまでベースであり、インタビューを通じて、その方の実際の経験やリーダーとしての潜在能力を見極めるようにしています。

竹内:付加価値はまさにその暗黙知の部分だと思います。テストだけやっていれば御社はいらなくなりますよね。テスト業者に任せればいいわけですから。

ハーバード大学経営大学院教授
竹内 弘高(たけうち・ひろたか)

国際基督教大学卒業。カリフォルニア大学バークレー校経営大学院でMBA、Ph.Dを取得。1976年より1983年までハーバード大学経営大学院助教授、1983年より一橋大学商学部助教授、同教授。2000年に開校した一橋大学大学院国際企業戦略研究科の初代研究科長に就任。2010年よりハーバード大学経営大学院教授。野中郁次郎氏と書いた「The Knowledge-Creating Company」は1995年度の全米出版協会のベスト・ブック・オブ・ザ・イヤー賞(経営分野)を受賞。また、野中氏と書いた「The Wise Leader」が、米誌ハーバード・ビジネス・レビュー 2011年5月号にカバー論文として掲載。