監修:吉岡太郎
株式会社エイチ・アール・ディー研究所 取締役

 2月28日に、日経ビジネスセミナー「人材開発のプロ養成講座2013年」を開催しました。

 ヒューマンキャピタル Onlineでは、直前インタビューとして事例の一部をご紹介しておりましたが、続きとなる後半のインタビューをお届けします。

 第3回では、「創造を通じて組織全体を元気にさせるソニーの取り組み」にご登壇いただいたソニーの中川輝俊氏に、「自律する組織」を体現するボトムアップによる社内アイデア交換会という取り組みについてお話ししていただきました。こちらの記事の続きとなります。今回も、インタビューおよび執筆は、監修者である私、吉岡太郎が自らインタビューおよび執筆を担当しました。

「ふり」をせず「ちゃんと」やる

吉岡:ディスカバー活動は「現場のモチベーションを上げ、組織・人材の活性化を通じて商品力の向上につなげていこうとする活動」だったと思います。商品力の向上、ここでは「商品化率」が一つの目安でしょう。それを上げるには組織・人材の活性化が必要で、そのためにはより現場に近い実行委員のモチベーションを上げないと、ということですね。

中川:とにかく、ボトムアップの「ふり」をせず、徹底的にボトムアップで「ちゃんと」やろう、と事務局側に回った時に思いました。

吉岡:「ふり」というのと「ちゃんと」やるのは大きな違いがありそうですね。

中川:結果は大きな違いとなって現れました。具体的には商品化率がそれまでの1.6%から6%へと。約4倍ですよ。実際の取り組みは小さなことの積み重ねで、「本質は細部に宿る」という言葉がありますが、本当にその通りだな、と。

吉岡:どのような取り組みか、より詳しく教えていただけますか?

中川:はい。まず、事務局から実行委員への初回オリエンテーションで「前例は気にしなくてよい」と宣言しました。これは実行委員へのメッセージというだけでなく、事務局側の自戒でもあります。実際、実行委員側は「そうは言っても」と半信半疑だったのではないでしょうか。

吉岡:実行委員は、前年の実行委員から「結局、前例主義だから」みたいに聞かされているかもしれませんからね。

中川:そして、前年までは「お金のことを気にせず、自由に考えてほしい」という意図から知らせなかった予算も、実行委員には最初からオープンにしました。

吉岡:それでは、お金のことを気にして、小さくまとまってしまうのではないですか?

中川:いえ、むしろオープンにすれば、「やりたいこと」が出てきた時に「どうしたら実現できるか」を、自分達で予算を考慮した現実的な選択肢を出すことができます。それがないと、「〇〇やりたいんですが」に対し「お金がかかりすぎて無理」というムダな議論が増えてしまいます。

吉岡:確かに、「ルールの後だし」というのは、実行側のモチベーションを一気に下げてしまう。「だったら先に言ってよ。他にまだ言ってないことあるんでしょ。それまで待ってるから」となりますから、事務方サイドで最もやってはいけないことの一つですね。