築谷奈緒子
株式会社エイチ・アール・ディー研究所 開発部 コンサルタント

 “ASTD LEARNING SYSTEM”のモジュール5は「組織の変化の促進」-“Facilitating Organizational Change”だ。タイトルからして難しそうなオーラが出ている。ダメもとで永塚さんに話をふってみた。

「次のモジュールは『組織活性化』とかと関係があるんですかね?」
「そうだな。日本での『組織活性化』というと、阻害要因や問題点に対しての様々な取り組みとその成果に重点が置かれて説明がなされることが多い。しかし本来は、〇〇をしたので~~の結果になった、ということの積み重ね、というだけではないんだ。もっとダイナミックな変革を促す基礎となる考え方が多く書かれている」
「基礎となる考え方というと…」
「複雑系とかカオス理論とか、システムシンキングとかAIとか…」

 ストップ、ストップ! やっとわかりそうな言葉が出てきたので、言葉を挟んでみた。

「『AI』なら知っています。人工知能のことですよね」
「それは“Artificial Intelligence”だろ。ここでのAIは“Appriciative Inquiry”だ」

 スミマセン。ちゃんと読んでから出直してきます。

1章 システムシンキングとオープンシステム理論

    システムシンキングとは
  • 組織全体への視点の転換を含む深い思考技法であり、その過程において、何が本当に重要なのかを立ち止まって熟考できる
  • 適切な介入を行うために最も効果的な場を見つけるために、問題をより大きな文脈の中に位置づける

    システムシンキングのメリット
  • より多くの知識(適切な質問)
  • 過程におけるステークホルダーの関与
  • 問題に対する理解の共有
  • 検討され統合された多くの視点
  • 日常の出来事を超えた視野
  • カギとなる意思決定者による長期的な視点
  • 競争優位とみなされる大きな全体像

    システムシンキングの特徴
  • 複雑な関係性や相互依存性を理解する
  • 問題を解決する責任を負う
  • 短期的および長期的な要求と視点の釣り合いを保たせる
  • 状況の全体を見る
  • 日常の出来事によって引き起こされない、繰り返し起こる問題のパターンを見分ける
  • 背景にあるすべての仮定を問う
  • 理解と思いやりを育む

 以下のシステムシンキングの基本原則は、
カウフマン:D.L.Kauffman(1980)
Systems 1 : An Introduction to Systems Thinking
センゲ:P.Senge(1994)
The Fifth Discipline Fieldbook
に基づいている。

  • 最終的なまたは正しい答えはない
  • 原因と結果は時間と空間には関連していない
  • ソリューションには注意深い熟慮が必要である
  • 行動はよくなる前には悪くなる
  • すべてのシステムには限界がある
  • 洞察は組織に利益をもたらす

現実世界:ヘルスケア分野
参考文献
コーリス:J. Couris (2000)
Best Practice in Knowledge Management and Organizational Learningt Handbook
キム:D. H. Kim(1994)
System Archetypes
イベントレベル:何かが起こり、単純に出来事に反応する
パターンレベル:何かが複数回起こり、パターンを見るプロセスが始まる
ストラクチャーレベル:プラクティショナーは「問題の根本原因は何か?」問うことができる

    オープンシステム理論とは
     オープンシステム理論は、以下のような考え方である。あらゆる組織は、
  • 人の要因、原料、資金、情報などの環境のインプットを吸収するシステムである
  • それらを変形可能なプロセスの中でサービスの受け渡しや製造技法として用いる
  • それらを製品やカスタマーサービスなどのアウトプットとして排出する

    システムの視点
     システムの視点によって、全体を形作る部分の相互関係や相互作用の重要性を認識することができる。以下の質問はシステムの視点を保つために助けになる。
  • 部門の戦略は組織の戦略とリンクしているか?
  • 部門の内部・外部顧客は誰か?
  • 部門の製品やサービスは何か?
  • これらの製品やサービスに対する顧客の要求は何か?
  • パフォーマンスはこれらの製品やサービスが顧客の要求をどれだけ満たしているかによって評価されているか?
  • 部門の内部・外部供給者は誰か?
  • 部門横断的なプロセスにおける部門の役割についての文書はあるか?
  • 部門はどの程度部門横断的なプロセスに貢献したかによって評価されるか?
  • 部門に流れ込むプロセスの上流のパフォーマンスは評価されているか?
  • 効果的かつ効率的にパフォーマンスに関する情報を集めそれらを必要な人々に提供する、トラッキングとフィードバックのシステムはあるか?
  • 顧客はシステムにおけるパフォーマンスのギャップを解決する(根本原因を除去する)スキルを持っているか?
  • 従業員は、仕事のデザイン、ゴール、フィードバック、報酬、リソース、トレーニングによってプロセスが最大限に効率的かつ効果的になるような環境で働いているか?

 「最終的なまたは正しい答えはない」とか「行動はよくなる前には悪くなる」というのは、HRDという仕事をやってきてみて、なんだか実感できることだ。System Archetypesの「イベントレベル:何かが起こり、単純に出来事に反応する」「パターンレベル:何かが複数回起こり、パターンを見るプロセスが始まる」「ストラクチャーレベル:プラクティショナーは『問題の根本原因は何か?』問うことができる」は、最近、永塚さんによく注意される部分だ。「お前は、すぐに目の前の出来事に反応して行動を起こそうとする。動物か?」って。

 こうして見ると、「組織の変化」なんて大変そう、と思っていたけれど、意外にいろいろなことに通じることを言っているんじゃないかな…。でも、次は「カオス」ですか。大丈夫かなぁ。