監修:吉岡太郎
株式会社エイチ・アール・ディー研究所 取締役

 日経ビジネスセミナー「人材開発のプロ養成講座2013年」のテーマは、組織を元気にするマジカルセミナーと題し、現場主導/階層別研修を起点にした、様々な組織活性化のアプローチを取り上げます。それに先立ち、講座内でご紹介する事例の一部をご紹介していきます。

 第3回は、「創造を通じて組織全体を元気にさせるソニーの取り組み」にご登壇いただくソニーの中川輝俊氏に、「自律する組織」を体現するボトムアップによる社内アイデア交換会という取り組みについてお話ししていただきます。今回は監修者である私、吉岡太郎が自らインタビューおよび執筆を担当しました。

ソニーにも大企業が陥る組織的な問題がある

吉岡:本日はお忙しいところありがとうございます。まずは、会社のご紹介からお願いします。もちろん「ソニー」と言えば、家電やパソコン、ゲームなど幅広い事業を展開しているメーカーなわけですが、その中にあって、「デジタルイメージング事業本部(以下DI事業本部)」はどのような事業ドメインをカバーしていらっしゃるのでしょうか?

中川:割と歴史があるのが、ビデオカメラ。主に動画用途の商品で、「ハンディカム」と言えば皆さん知っていらっしゃるのではないでしょうか。そして、動画に対して静止画用途のデジタルカメラ。こちらは「サイバーショット」や「α」シリーズと、2010年から追加したミラーレス機の「NEX」シリーズが主力の商品群です。

吉岡:「ハンディカム」「サイバーショット」などは、一世を風靡したブランドですね。

中川:ええ。今もメインのブランドであり続けています。しかし、この世界では次の一手、さらにその次の一手、と新しいものをやはり生みだし続けていかなくてはいけません。

吉岡:技術大国ニッポンの象徴的存在であり続けてほしい、というのは消費者の側からの希望でもあります。特に、ソニーは常に新たな「とんがっている」商品を出す元気なメーカーというイメージです。今日は、その秘密に迫ってみたいと思っています。

中川:そういう印象を持っていただいているのはありがたいことだと思います。一方で、あと3年で創業70周年を迎えようとしている、単独の従業員数でも1万人をゆうに超える一大メーカーですから、いわゆる大企業が陥る組織的な問題、というのも無いわけではないんです。

吉岡:とおっしゃいますと?

中川:日本のエレクトロニクスメーカーは「垂直統合」のビジネスモデルで戦ってきましたが、パソコンやスマートフォンは「水平分業」です。DI事業本部の場合は前者に近く、やはり「上意下達」の文化と言うか、「縦のライン」の意志がきっちりと伝わる、というのが大切なんです。なので、そこに最適化された組織の風土になっているとも言えます。

吉岡:日本的な多くの企業は、上の経営層はなかなかハッキリした戦略を打ち出さない。一方、下の一般社員は指示待ちで新しいことに挑戦してもムダだと思っている。何と言うか、身動きが取れない風土、というのに苦しんで、なんだか「組織活性化」が時代のキーワードになってしまった、という現状があります。ソニーも例外ではない、と。

中川:程度の問題はあるでしょうが、多かれ少なかれ、そんな一面もある気がします。私自身の仕事でも、DI事業本部内の「組織活性化」や「コミュニケーション促進」を意識的に行う取り組みがあります。

吉岡:なんだか意外な感じですが、それだけに、今日のお話は同様の問題に頭を悩ませている多くの企業の皆さんの、ヒントとなるようなことをお聞きできるのではないか、という気もしてきました。

中川:ええ、お役に立てるお話ができれば幸いです。

ソニー株式会社
中川 輝俊(なかがわ・てるとし)
デジタルイメージング事業本部 経営企画部門 経営企画部 シニアプロデューサー
東京理科大学工学部経営工学科を卒業後、日産自動車株式会社にて生産性改善を担当。その後、ソニー株式会社にてホームビデオ事業の経営企画スタッフ、デザインセンターのマーチャンダイザー(コーポレートプロジェクト担当)、合弁会社の経営(株式会社サードエイジスタイル・取締役)、他社アライアンス担当などを経て、2010年よりデジタルカメラ事業における経営品質活動を担当。組織活性化・人材育成・商品化フレームワークの要素をすべて網羅したプログラム開発を実践している。