監修:吉岡太郎
株式会社エイチ・アール・ディー研究所 取締役

 日経ビジネスセミナー「人材開発のプロ養成講座2013年」のテーマは、組織を元気にするマジカルセミナーと題し、現場主導/階層別研修を起点にした、様々な組織活性化のアプローチを取り上げます。それに先立ち、講座内でご紹介する事例の一部をご紹介していきます。

 第2回は、「リーダーの一歩一歩が会社を変える」にご登壇いただく富士電機の那須敏幸氏と川田直幸氏に、200人のリーダーが変革に向けた第一歩を踏み出す研修についてお伺いしました。座学中心の研修にとどまらない、研修後に変革への行動へ結びつける促す取り組みについてご紹介します。今回は監修者である私、吉岡太郎が自らインタビューおよび執筆を担当しました。

企画と実施を明確に役割分担

吉岡:本日はお忙しいところありがとうございます。まずは、会社のご紹介からお願いします。

川田:はい。名前は「富士」電機ですから、日本を代表する電機メーカーと言いたいところですが、コンシューマー製品がないので、一般にはなじみが薄いかもしれません。昨今、「電気エネルギー」がいろいろな意味で注目されていますよね。それを「創る」ための発電に関わる機械から、それを効率よく「使う」ための機器や半導体を開発・製造しています。また、皆さんの身近なところでは、自動販売機なども手がけています。

吉岡:自動販売機というと、駅にある、最新の全面液晶パネルのものとかもですか?

川田:ええ。どこにも「富士電機製」と書いてはいないのですが、あれはすべて弊社が開発・製造しています。その他、ここ10年間でグローバルシェアNo.1の地熱発電のプラントといった大きいものから、バイブリッドや電気自動車の様々な制御を司る半導体といった小さいものまで、様々な製品で皆さんの生活や社会を支えているんです。

吉岡:人知れず、大きな社会貢献をしているメーカーということですね。

川田:はい。いろいろと社会貢献をしています。あまり社名が前面に出ない場合も多く、「もう少し一般に幅広く知っていただきたいな」とも思うのですが…。

吉岡:さて、その富士電機さんの試みをお聞かせいただくわけですが、人事・総務の企画セクションと能力開発センターとでは、どのような役割、関係にあるのでしょうか?

川田:人事・総務の企画セクションでは、本社に席を置き、経営層に近いところから今後の人材戦略ですとか、その実現のために何が必要か、を決めています。

那須:逆に能力開発センターでは、日々、現場の方々が受講生としていらっしゃるので、「現実的な解」と言うか「しっかりと効果に結びつくカリキュラムを考え実施する」という役割を持っています。

吉岡:なるほど。グローバルで見ると、トレーニングの企画を立てる人と、そこから具体的なカリキュラムに落としていく人と、制作や実施をする人がそれぞれ「プロフェッショナル」として役割分担をするケースが多くあります。きっちりと責任範囲を分けることで「効果を最大限する教育設計プロセス-ADDIEモデル」のAnalysis-分析、Design-設計、Development-開発、Implementation-実施、Evaluation-評価のプロセスを一つひとつ確実に回していくことができるわけです。日本の企業だと、このプロセスが極めて曖昧で、ポンとテーマが出てきて、あとは研修ベンダーを探して…、ということでいきなり実施のところまできてしまう。まあ、研修ベンダー側もそちらのほうが楽でいいと思っているんでしょうけど、なかなか「効果」が見えにくい。その点、富士電機さんは組織上もその役割が明確に分かれているので、しっかりと戦略に沿ったトレーニングを実施できるというわけですね。

川田:お互い試行錯誤しながら進めていますよ。ですから、コミュニケーションをとりあう事が重要だと思っています。

富士電機株式会社
那須 敏幸(なす・としゆき)
人事・総務室 能力開発センター 担当課長
1987年明治大学工学部卒業、富士電機株式会社入社。富士電機総合研究所に配属され電子機器の開発に携わる。その後、富士電機とシーメンスの合弁会社富士電機エレクトリックコンボーネンツ(現:インフィニオンテクノロジー)に出向/転社し、フィールドアプリケーションエンジニアとして技術と現場の最前線で活動。その後ミクロナス・ジャパン株式会社を経て、2009年に富士電機の人材開発を担う、富士ブレイイントラスト株式会社(現:富士電機株式会社に統合)に再入社。能力開発センターにおいて、幹部社員の選抜研修を中心に具体的なカリキュラムの策定から運営までの幅広い業務に携わる。