大島由起子
インフォテクノスコンサルティング株式会社 セールス・マーケティング事業本部長

 今回は、13年前に外資系転職サイト「キャリアクロス」を立ち上げ、英語を生かして働きたい日本人や日本で働きたい外国人と、そうした人材を採用したい企業の橋渡しをしてきたリチャード・バイサウス氏に、日本の国際化、グローバル化についてお話を伺いました。

大島:現在、多くの企業がグローバル化に取り組み始めていますが、必ずしも思うように進んでいないのが現状のようです。バイサウスさんからご覧になって、どのあたりが問題だと思われますか?

グローバル化の問題は日本だけが直面しているわけではない

バイサウス氏:今、日本企業ではグローバル化が課題となっていますが、これは日本企業だけが直面している一方通行の問題ではありません。西欧の企業も日本に入ってきたときには、自分たちのやり方がそのままでは通用しないという、同様の問題にぶつかっているのです。日本だけがグローバル化に苦労しているという劣等感を必要以上に持つ必要はないと思います。英国企業はイギリスのやり方を、米国企業はアメリカのやり方を持っている。そこに摩擦がないわけではありません。日本企業も、自分たちがやっていることにもう少し自信を持っていいのではないでしょうか。

大島:ただ私たち日本人の目から見ると、欧米発の多くの企業がグローバル化に成功しているように映ります。

バイサウス氏:皆さんが目にしているのは、課題を乗り越えて成功した企業です。それはあくまで一部で、その裏で失敗した企業が沢山あるのも事実です。最初に日本やってきたとき、自分たちのやり方をそのまま押しつけてしまう欧米企業は少なくありません。彼らのやり方での成功体験がありますから、最初から日本のマーケットに合わせて変えていこうとは考えにくいのでしょう。しかし、それがうまくいかないとわかったとき、日本のやり方に合わせる努力を始め、現地に根づいていくのです。

 私が関わったある米国企業は、シンガポールでうまくいったことが、アジアの他の国でもうまくいくと考えていました。さすがに中国は少し違うと思ったようですが…。日本を含めその他のアジアの国をひとくくりに捉えていたのです。しかし、ご存じのようにシンガポールはキリスト教の価値観が浸透しており、西欧との関係が長い、国際化の進んだ国です。そこでの成功事例が、そのまま日本でうまくいくとは限りません。日本には独自の価値観があり、独自の宗教観がある。日本では宗教観が希薄だと思うかもしれませんが、子供のころから言われてきた善悪の判断には、仏教や神道といった身近にあった宗教の影響が入っているものです。そしてそれはビジネスのやり方にも影響を与えています。このあたりが欧米の企業にはわかりにくいのです。

 別の米国企業の日本支社ではこんなことがありました。日本支社長(米国人)が営業部門でぜひ採用したいと思った日本人を、最終面接として本社の副社長に会わせました。するとその副社長は、ひとつの質問に的確に答えられなかったことを理由に、採用は見送るという判断を下したのです。それは純粋に英語力の問題でした。彼は英語がまったくできないわけではありませんが、副社長からの質問のひとつに答えることができなかった。しかし、彼は日本市場の営業を担当するのであり、他社からも多数オファーを得ている優秀な人物だったのです。それでも、副社長は「彼は信用できない」の一点張りで、採用は流れてしまいました。自分が見ている世界がすべてで、そこでの判断だけが正しいと思うことは危険だという例だと思います。

 これから日本企業も外に出ていくわけですが、こうした失敗に陥らないようにする必要があると思いますね。

 もちろん、日本に進出し、大きな成功を収めている米国企業も知っています。彼らは最初から日本では物事がどう進められているのかをつぶさに観察し、理解しようと努力しました。そのうえで、アメリカで成果を上げている方法をどのように日本のシステムに組み込んでいくのかに真剣に取り組んでいった。その結果、その企業は日本市場で大きく成長していきました。

大島:成功した欧米企業を見て日本はグローバル化に遅れている、うまくできないと委縮してしまなわないで、その背後にある先人たちの失敗例から冷静に学ぶ、という視点が大事だということですね。

株式会社シー・シー・コンサルティング
リチャード・バイサウス
代表取役社長
1965年イギリス生まれ。81年学校を中退して放浪の旅へ。87年ロンドンで洋服店に就職。90年に来日、日本人女性と結婚し、一度ロンドンに戻るが96年再び日本へ。旅行代理店、人材業界を経て、外資系人材紹介会社が日本支店を立ち上げるために日本代表としてヘッドハントされる。その後、2000年に外資系転職サイト「キャリアクロス」を立ち上げ、今日では日本最大級のバイリンガル転職サイトとして、その地位を確立した。また2012年には、キャリアクロスのアジア版、キャリアクロスアジアを立ち上げ、日本人バイリンガルだけでなく2カ国語(英語+現地語)が使える現地ローカル人材も含めた人材と企業のマッチングをサポートしている。
■運営サイト:キャアクロスキャリアクロスアジア