吉岡太郎
株式会社エイチ・アール・ディー研究所 取締役

 11月9日に、日経ビジネスセミナー「人材開発のプロ養成講座2012年秋」を開催いたしました。80名近くの方にご参加をいただき、具体的な事例に多くの方が熱心にメモを取っていらっしゃいました。アンケートでは

「来年度の新人研修を考えるために、参考になった」
「今まで自分たちがやってきたことを反省した」

などのご意見をいただきました。

 ヒューマンキャピタル Onlineでは、直前インタビューとして事例の一部をご紹介しておりましたが、続きとなる後半のインタビューをお届けします。今回は、インテージの乾奈央氏と井上菜穂美氏に、“教えない”新人研修についてお伺いしました。新人研修中に、実際の業務プロジェクトを任せてしまう革新的な取り組みについてご紹介します。
こちらの記事の続きとなります。

「経験学習」の実践版

乾:いえ、違います。本当に次年度の新卒採用の学生向け会社説明会の場を、新人たちで運営させます。もちろん会社説明のプレゼンテーションも、学生の前で実際に行うのです。また、それが「最終」になってはPDCAになりませんから、説明会の時期は毎年おおむね4月の第3週です。

吉岡:えっ、そういう「設定」ということではなくて、「実際に」ですか?たった3週間で、会社のことをよく知るところから始めて!?しかも、インプット、つまり教え込む量はどんどん減らされているというお話でしたが…。

乾:はい。難しい仕事を任せられるとプレッシャーはありますが、嬉しいですよね。だから、新人も本物の仕事を任せられたら、頑張って取り組むだろうし、達成できたら自信がつくのではないかと思いました。

吉岡:インプット、つまり十分な知識とスキルをつけさせてから実際に行動させる、というのがこれまでの一般的なやり方だったわけですよね。しかしそうではなく、「仕事の経験」から「PDCA、つまり振り返り」を通じて学んでいくということですか。アメリカのディビッド・コルブという学者が「経験学習」という新たな学びのプロセスを提唱しています。まさにそれの実践版ですね。ただ、いずれにしても、インテージという会社を学生に説明できるだけの知識は必要なはずです。それをインプットせずして、どのようになさっているのですか?

乾:第2週に「現場インタビュー」を行っています。以前は5~6人のグループで管理職・リーダークラスのところにインタビューに行っていました。2012年度は、一人ひとりが各自、違う現場の社員と会い、様々な情報を得てくる、というスタイルです。

吉岡:グループでのインタビューから一人ひとり、というように変えられたのには、どのような狙いがあるのですか?

乾:一つはビジネスマナーなどのスキルを実践する機会を全員に持たせるため。もう一つは「自分が得てきた情報は自分しか知らない」という状況を作り、責任感を持って情報収集し、それを分かりやすく仲間に伝えるというプロセスの中で、しっかりと会社のことを理解してもらうためです。

吉岡:なるほど。ジグソーメソッドを活用されているのですか。また、単なる情報収集ということだけでなく、インタビューをビジネスの基礎スキルの実践の場としているわけですね。