一色顕
リンクイベントプロデュース 代表取締役社長

 前回のコラムで、時間の経過と共に生じる組織の沈滞化や構成員同士の視界のズレ、モチベーションダウンといった問題を解消するためには、節目を入れ、変化をもたらす“きっかけ”の場であるイベントを活用する「イベント・フォーカス・マネジメント」が有効とお伝えしました。また、イベント・フォーカス・マネジメントの真髄は、意図的・計画的にイベントを事業活動・組織運営に埋め込むことで企業経営にダイレクトにインパクトを与えていくこと、とお話しました。

 では、企業経営にダイレクトにインパクトを与えるようなイベントは、どうすれば実践できるのでしょうか。今回のコラムでは、ここを深堀りしていきたいと思います。

1つのイベントを1つ以上の意味、目的で実施する

「社員のモチベーションをあげるために、1つのイベントを実施する」
「このイベントでは今年度の方針を共有する」

 このように1つのイベントは1つの目的のために実施するという考え方が一般的かもしれません。しかし、イベントを事業活動や組織運営に埋め込むためには、この考え方自体を変える必要があります。それは1つのイベントを1つ以上の意味、目的のために実施する「One Event, Multi Purpose」という考え方です。

 イベントを実施するコストは決して安くはありません。会場費や演出・運営の外注費用などはもちろんですが、何よりも高いのは参加者および関係者の機会費用です。同時に発生する様々な課題と対峙しなければならない企業経営において、その課題解決の手段が1つの課題ごとの1対1対応では、費用的にも時間的にも実行する投資対効果が低すぎます。1つの手段(イベント)で複数の課題解決が実現できてはじめて、そのイベントを実行する価値が生まれてきます。

 イベントは企画と演出次第で、1つのイベントに複数の意味を持たせることが可能です。もちろん工夫は必要ですが、「One Event, Multi Purpose」という考え方でイベントを実施するからこそ、企業経営にインパクトのある投資対象としてイベントを組み込むことが有効に働くのです。この考え方をどう実践すればよいのか、表彰式を例にみていきたいと思います。

【事例】表彰式
 社内で何らかの表彰式を実施している企業は少なくありません。成績優秀者の表彰や、プロジェクト、キャンペーン単位での優秀者もしくは優秀チームの表彰、昇格者表彰、永年勤続表彰といったものもあります。これらの表彰式は多くの場合、表彰対象者へのご褒美、モチベーションUPを目的としたイベントとして実施されているようです。もちろん表彰式を行う最初の目的はおそらくここにあり、これを表彰式1.0とします。

 ここから少し視点を変えてみましょう。企画や演出を変えて工夫を施すことで、他の目的・意味合いを持たせたイベントとしても実施できます。例えば、表彰の結果を発表するだけでなく、プロセスやナレッジを共有する。表彰対象者だけでなく、非対象者のモチベーションUPやナレッジ共有による育成を目的としたイベントとして仕立る。これが表彰式2.0です。

 さらにもう一歩進めて、表彰制度や表彰基準の設計まで踏み込むことで、選出者側やマネジメント陣の判断基準のすり合わせの機会とする。表彰を意識的に活用したマネジメントやフォロー施策と接続して組織開発の契機とする。表彰式3.0ともいえるこのフェーズまでくれば、過去の功績に対するご褒美の付与としてのイベントではなく、未来への投資活動としての経営イベントといえるでしょう。

 表彰式以外に、新卒採用を行うために実施される会社説明会なども、応募者だけではなく、採用する側に影響を与えるイベントとして意味を持たせることが可能です。学生に対して自社の説明や自身の仕事を語ることで、会社や仕事を捉え直し、モチベーションを高める絶好の機会となります。

 会社の創業何周年かを祝う周年イベントも、会社の歴史を振り返るセレモニーとして実施しているケースをよく見受けますが、そこにとどまらず、新たな会社の創業機会として未来の自社について考える契機としたり、自社の理念を再確認・再共有する機会として活用することもできるでしょう。