築谷奈緒子
株式会社エイチ・アール・ディー研究所 開発部 コンサルタント

「元谷さん、今日の朝のアレ何だ?」

 アレ、というのは今朝の研修の立ち上げで、課長さんたちに「これから冴え渡った頭で研修を受けられるように、ちょっと体をほぐしてみましょうか?」と「ノビ」をさせたことに違いない。早速、先輩の永塚さんからの突っ込みが入ってしまった。

「やっぱり、まずかったですかね?」
「いや、よかったんじゃないか。部屋の雰囲気がガラッと変わったよ」

 実は、前回の「研修の実施」 ― “Delivering Training”の第5章で紹介されていたラーニングテクノロジーのうちの一つ「参加者に体を動かさせる」をちょっと試してみたかったのだ。勉強したことは使ってみないとね。

 今、私は“ASTD LEARNING SYSTEM”という、アメリカのASTDという団体が出している“人材開発のプロとしてこれは最低限知っておくべき”ことをまとめた本(9モジュールもある!)の、日本語のまとめ資料を作っている。やっと2つ目が終わり、次はモジュール3「人のパフォーマンスの改善」?“Improving Human Performance”。でも、「そもそもパフォーマンスって何だろう?」と考えていたら、なんだか難しい顔をしていたからだろうか永塚さんが声をかけてきてくれた。 

「次のモジュールはちょっと手強いから、解説を始めにしたほうがいいかもな」
「ぜひ! お願いします」
「元谷さん、強いプロスポーツチームを作るのに、大事な要素って何だろう?」
「えっ? えっと、プロ野球なら、ゲームで鍛えました。やっぱり打順ですね。あとはピッチャーのローテーション」
「質問を変えよう。プロスポーツの選手は試合以外のところで何をしている?」
「練習。うーん。なんか個人のトレーニングとチームでの実践形式の練習と両方ある気がします」
「そうだな。基礎的な体力に加えて、実践的なスキルの強化は欠かせないな。それだけか?」

 そう質問されて、スポーツのテレビ特集などを思い出してみた。

「健康管理には気を使っていると思います。あと、相手チームのビデオを見ての研究とか。チームでのミーティングも大事でしょうね」
「他には?」
「ファンサービス! これも入るのかなぁ… 契約交渉…?」
「サッカーなんかだと、サポーターは12人目の選手、なんて言われているからな。契約金はやる気に影響を与える要素だし、これもいいポイントだ」

 それで…?

「じゃあ、最初の質問に戻ろう。強いプロスポーツチームを作るのに、大事な要素って何だろう?」

 なるほど!

「いい練習、これは練習内容もそうだし、練習環境もあると思います。健康管理だって、個人任せでなく、専門家がついていたほうがいいし。それから、情報も今の時代大切ですね」
「バレーボールでは、タブレットなんかを試合中持ち込んでたな」
「ファンやサポーターを増やすことや、チームのブランド力を上げるのも意外に効いてくると思います。契約金は…、チームの資金力次第ですね。でも、誰に、どのくらい、というのはモチベーションに大きく関わってくるし…って、何の話でしたっけ?」
「つまり、例えば優勝という組織のビジネスゴールを達成するためには、個人のスキルのトレーニングだけではカバーできない領域が多くある、ということだ。以上」

 一体何の禅問答だったのだろう。まあいいや。