吉野明日香
株式会社エイチ・アール・ディー研究所 開発部 マネジャー

 老舗企業として有名な我が鶴亀魔法瓶は、創立100周年を目指すための20年にわたる長期戦略として、サスティナブル改革プランに取り組んでいる。私も入社して9カ月…。新卒新人なのに、どんどん仕事を任せてくださる上司や先輩のお陰で、サスティナブル改革プランの活動について、ずいぶん巻き込まれていた。

 先日、クリスマスパーティーを兼ねた同期会があった。人材開発という部門にいるせいか、どうも周りの同期の成長が気になってしまう。「最近、どんな仕事やってるの?」なんて雑談をしてみると、人によって任せてもらっている仕事のレベルは様々だということが分かった。もちろん色々な仕事があるのだから、簡単に任せられることと、そうではないことがあるのは当然だろう。

成長には本人の努力ややる気以外の要素も重要

 私の話をしたら、「そんなに任せてもらってるんだ。すごいね!」と言ってもらえた。しかし、どう考えても私が新人の中で特別優秀だとは思えない。仕事の内容のせいで差がついているというよりも、部の雰囲気や上司の考え方の影響が大きいような気がした。社会人としての成長って、本人の努力ややる気以外の要素も重要なんだなぁ。同期会でそんなことを実感するとは思わなかった。

 同期の中にはルーチンや雑用ばかりで、一人前になるために焦っている人やミスをして落ち込んでいる人もいた。仕事によって一人前になるまでの道は違うんだから、それぞれの場所で頑張るしかないんじゃないかなと思ったけれど、どうやら恵まれた環境にいるらしい私が言ったら、上から目線になってしまう気がして…。「私もミスとかして、先輩に迷惑かけてるよー。それに社内が相手のことが大半だし、お客様と直接やり取りしたり、商品製造に関わっている方がすごいって。そんなのできないもん」と誤魔化した。

 月1回の部門会議は、倉持部長、岩松課長、永塚さん、私と、部門のメンバーの全員で行われる。いくつかのプロジェクトの進捗報告や検討を行い、会議も終わろうかというところで、倉持部長が口を開いた。

「予定していた議案については、以上でよいですか。さて、そろそろ次年度の新人研修の企画を始める時期になってきました」

 えっ? 新人研修? 倉持部長が口にした単語に、私は驚いた。この前、入社して9カ月経ったなぁなんて話はしたばかりだけれど、もう来年度の新人研修? 研修の企画には3カ月は欲しいから、4月1日にスタートすることを考えれば、そろそろ動き始めてもおかしくはないのだけれど…。

「本年度は永塚さんに、企画から一部のインストラクターまでやってもらいました。来年度はどうしましょうか」
「倉持部長、来年は元谷さんをメイン担当にしてはどうかと考えています。永塚君には、それをサポートしてもらっては」

 倉持部長の投げかけに、岩松課長がにこやかに応じた。