松丘啓司
エム・アイ・アソシエイツ(株) 代表取締役社長

 ある企画会議の一場面です。中期事業計画を立てるにあたって、売上拡大のための施策について話し合われています。

部長:「売上を大幅に拡大するために、どのようなアイデアが考えられるか?これまでの発想にとらわれず、自由に意見を言ってもらいたい」
部員A:「わが社は長くお付き合いのある既存顧客からの安定的な売上にあぐらをかいてしまっています。新規顧客開拓をもっと積極的に行う必要があると思います」
部員B:「経営資源は限られているため、単に新規顧客を増やしてもあまり効率的ではありません。むしろ、有望顧客に資源を集中して、顧客内でのシェアを高めるべきではないでしょうか?」
部員C:「今の商品だけでは限界があると思います。付加的なサービスを提供することによって、顧客あたりの売上を増やすことを考えた方がよいと思います」
部長:「どれももっともな意見だ。では、それぞれのアイデアをプランにまとめてくれ。来週、それに基づいて議論しよう」

 このコミュニケーションをご覧になって、皆さんはどう感じられますか?

 こんなに優等生のような発言ばかりの会議は考えられない、と思われるかもしれません。確かに、各部員の意見は論理的で、理想的な企画会議のようにも見えます。けれども、この会議のコミュニケーションから、大きな変化を引き起こすようなアイデアが生まれてくることはないでしょう。なぜなら、これらの発言は、どれも当たり前のことを述べているに過ぎないからです。

「答え探し」に付加価値はない

 「新規開拓が少ない」「有望顧客のシェアが低い」「顧客あたりの売上が伸びていない」というのは、おそらく皆が知っているか、あるいは薄々、感づいている事実に違いありません。各人の発言は、それらの事実を公式に当てはめて言い換えているだけです。その公式とは、「売上=既存顧客の売上+新規顧客の売上」「売上=顧客の需要規模×顧客内シェア」「売上=商品の売上+付加サービスの売上」といったものです。

 既知の事実に公式を当てはめてプランを作っても、やはりそうだったのか、ということが確認されるだけでしょう。もちろん、「本当はやるべきだが今はできていないこと」をしっかりと行うことも重要です。けれども、それだけでは、飛躍的な変化は生み出されません。

 このコミュニケーションの問題点は、参加者に「答え探し」を促してしまうところにあります。所詮、探して見つけられるような答えに画期的なものはありません。また、そこに参加者ならではの付加価値もありません。答えを「見つける」というのは、価値を加えることではありません。それは、発見するだけのことです。誰かが見つけられなくても、別の誰かに発見できるアイデアは、その人ならではの付加価値とは言えないでしょう。