松丘啓司
エム・アイ・アソシエイツ(株) 代表取締役社長

「常識的なプランばかりで、斬新なアイデアが出てこない」
「自分からリスクを取って、変化を起こそうとする社員が少ない」

 そのように嘆く経営者の声をしばしば耳にします。人口減少とともに国内売上が低迷しているため、画期的な商品やサービスを生み出したり、海外にもっと積極的に打って出たりしなければ、事業のさらなる成長は見込めません。現場の仕事は年々、増えていますが、忙しく働いているからといって、従来の発想の枠を越えるようなアイデアが出てくるわけでもありません。先の展望が持てない閉塞感が組織の中に漂い、経営者のいらだちは増すばかりです。

コミュニケーションがアイデアを生み出す

 変化が起こらないのは、社員個人の問題でしょうか?

 確かに、個人のがんばる気持ちが起こりにくい環境になっていることは否定できません。必死でがんばっても、デフレ経済の中では、がんばりに比例して給料が増えるわけではありません。それならば、大きなリスクをとってチャレンジすることよりも、リスクを避けて、ほどほどの成果をあげ、ほどほどの評価を得ようとする、安定志向を選ぶ心理も理解できます。しかし、だからと言って、すべての人が一斉に安定志向になって、現状を変えたくないと思っている、というのも少々、考えづらいことです。

 このような停滞状態に陥っている会社は、社内のコミュニケーションを点検してみる必要があります。新しいアイデアは個々の人間が考え出すことのように思われますが、実はそうではありません。会社に変化を起こすアイデアは、コミュニケーションによって生み出されているのです。個人が何かのアイデアを思いついても、コミュニケーションが現状維持を目指していたなら、そのアイデアはコミュニケーションに弾き飛ばされてしまいます。そもそも、そのようなコミュニケーションに浸っている個人は、型破りな発想をしなくなってしまうでしょう。

 会社という組織はコミュニケーションによってできています。そのため、組織が創造的・革新的になるのも、保守的・現状肯定的になるのも、コミュニケーション次第と言えます。職場でのコミュニケーションというと、「上手に話す」「上手に聞く(聴く)」「良好な人間関係を構築する」といったことを目的とした、個人のスキルアップに焦点が当てられることが少なくありません。けれども、ただ、わかりやすく話せるようになったからといって、創造的なアイデアが生まれてくるわけではありません。そのため、「コミュニケーション」を、個人の課題とだけ捉えるのではなく、組織の問題として考えることが必要なのです。