入江倫成
株式会社 IPイノベーションズ ビジネス ディベロップメント パートナー

 これまで5社5名の皆さんにお話をお伺いしてきた。皆さんそれぞれに会社の戦略的方向性に関する情報収集方法や、その情報を組織・人材開発に落とし込み、経営の戦略的方向性と連携した施策を実行されていた。一方で、「効果の数値化」という面では課題を感じていた方が多かった。これにはいろいろな原因が考えられるが、例えばその研修によって向上させたい組織・人材開発上の指標を事前に明確にするだけで、結果は大きく違ってくるのではないかと思っている。

 デルの加島さんのインタビューでも出てきたが、「どんなKPI(Key Performance Indicator)を向上させるために、その施策を行うのか?」を事前に定義する ―― 従業員満足度の中でも具体的に~の指標とか、顧客満足度の中でも具体的に~指標とか、エンジニアの1カ月あたりの提案書の提出件数とか、営業の受注率向上であるとか ―― ことが、戦略的人材開発に進むための次のステージではないかと思った。

 最終回である今回は、今後の企業内人材開発部が進むべき方向性をより具体的にご紹介するため、ASTDの日本支部である International Japan (http://www.astdjapan.com/)会長の中原孝子さんに「人材開発部のこれからの方向性」に関してお話をお伺いした。なお、このインタビューにおいて人材開発もしくは人材開発部とは、組織開発(OD:Organizational Development)若しくは組織開発に関する業務を含んだ広義の人材開発として定義している。

これから求められる企業内人材開発部のプロフェッショナル化

入江:中原会長はこれまでにコンサルタントとしてだけでなく、企業内人材開発部で活躍されたキャリアもお持ちですが、率直に言って現状の企業内人材開発部の問題点は何だと思いますか?

中原:研修の運営(オペレーション)に関わる業務に時間を取られてしてしまっていることだと思います。これには様々な原因が考えられます。実施しなければ研修の量と比較して、人材開発部のメンバーが少ないなどの物理的な理由もあると思います。しかし、敢えてこの場で人材開発部のあるべき論を言えば、人材開発部は経営戦略と社員のパフォーマンスとの媒介を、様々な人材開発施策の組み合わせを通じて成していかなければならない大変重要な存在だということです。そのためにはもっと「企画」と「レポート」にも時間とエネルギーを割いていかなければならないと思います。

入江:それはHPI(Human Performance Improvement)を実践せよということでしょうか?

中原:その通りです。そしてHPIの本質は対象者のパフォーマンス向上をゴールにした様々な施策の「統合(Integration)」です。「研修」だけではなく、大前提として戦略やそれに対応したビジネスプロセスの分析も必要ですし、研修後の現場で誰がどのように対象者に関与して、「新たなやり方」を身に付けされるのか、それに人事制度はどのように連携させるのかなど俯瞰的な視点を持って様々な要素を統合して考えることが必要です。ただし人材開発に関わるあらゆる施策をHPIのフレームワークで捉えて実践していくことは現実的ではないと思いますので、「できるところから手を付けていく」ことが重要かと思います。