大西 秀樹
埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授

 東北地方を襲った大震災から約2カ月経ちました。被災された方々の苦しみには筆舌に尽くしがたいものがあると思います。皆様方のご家族、同僚、そして友人にも被災した方々もいるのではないかと思います。では、悲しみの中にある方々をどのようにして援助すれば良いのでしょうか。

 震災から2カ月経過した今からが、心のケアに大切な時期となってきます。本コラムでは、震災を受けた方々および周囲の方々に対する心のケアについて考えてみたいと思います。

被災者を援助するうえで必要なこと

●被災した人は大きな心の傷を負っている
 被災者の方々は被害にあったことで、今までの生活、考え方、人生観が根底から覆され、将来の希望も無くなるか大きく変化しています。このような状態が心に傷を受けた状態です。ご自分の人生観が根底から覆ってしまった人が立ち直るためには、現在の環境が完全ではないが安心できるものだという感覚を得なければなりませんし、その他にも様々な過程が必要です。

対応

●ケアは時間のかかる作業である
 上述したように、震災で被害を受けた方々の心の傷は計り知れないものがあります。立ち直るまでにはかなりの時間がかかり、年単位の時間が必要な方もいます。あせらずに時間をかけて対応することが求められます。

●心のケアは、精神面の問題に対応することだけではない
 人生の苦難の中にある方々への援助に関する本を読んでいますと、精神的な援助を受けたと思う瞬間は、カウンセリングだけに限りません。辛いときに一緒にいてもらったこと、嫌だなと思うことから守ってもらったことで精神的な安定を得た人もいます。被災された方が何に困っているのか知ることも大切です。

●支持的な対応を心掛ける
 今回の震災は、私たちが今まで経験したことのない規模のものであり、話を聞いた人もショックを受け、どのような言葉をかけたら良いのか分からなくなってしまうこともあると思います。そのような時に、何とかしたいと思って、「こうしたほうがよい」、「頑張って」、「もっと辛い人もいる」などと発言してしまうこともあると思います。しかし、多くを失って辛い思いをされている方にこのような言葉をかけることで、さらに辛くなってしまうこともあるので注意が必要です。被災された方、その親族と話をするときには、まず話を良く聴くことが大切です。援助者が話を聴くことで、話した側が現状を肯定的にとらえることが可能になる場合もあります。