リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

 メキシコ湾沖で操業していたBPの石油掘削施設、ディープウォーター・ホライズンが爆発し、海中の壊れたパイプから約3カ月間に渡って原油が流れ出すという事故が発生してから約1年が経つ。この事件は海洋環境や漁業のみならず、自然環境、社会生活、観光業など、多分野において大きな打撃を与えた。地球規模の危機にも発展しうるこの状況に対し、「自社の商品やアセットを活用して何らかの貢献ができる」と考えたいくつかの企業が立ち上がり、自社ならではのユニークな取り組みを展開した事例を紹介する。今回の東日本大震災に際し、「企業としてできること」を改めて考えるきっかけとなれば幸いである。

地球規模の危機的状況

 事故が発生した当初BP社は、「広大なメキシコ湾の水の量に比べれば、流出した石油やそれを除去するための石油分散材の量は微々たる割合だ」としていた。そして恒久的な対策が次々と取られた。例えば、特殊深海潜水艇を使い海中パイプをレンチのようなものではさみ流出を防ぐ方法や、重さ100トンに及ぶ鉄とコンクリートの箱を海底の流出箇所にかぶせてパイプで海上の回収タンカーに送る方法(トップハット作戦)などである。ところが、高圧で噴き出す原油の力により蓋が浮き上がってしまい、繰り返し失敗してしまったのだ。

 ようやく7月15日に、「油田に蓋をする新たな箱の設置に成功し、石油流出が止まった」とされているものの、油断のならない状況は長期間続いた。結果、4月20日の事故発生時から7月15日までで流出した原油の量は約70万キロリットル、被害規模は数百億ドルと推定されている。経済的影響のみならず、地球規模で自然環境に大きな影響を及ぼす危機的な事態に陥った。

 一刻も早く、このような事態を回復へと転換させるためには、石油業界の早急な対応が必要であったのはもちろんのことである。しかし、当事者間だけの議論では、責任の所在を追及する議論で堂々巡りになり、環境危機の回復のために要らぬ労力が使われてしまうこともあろう。このような問題は国境や業界を超えて、我々の社会生活にも影響しうる地球規模の問題であるため、直接的な影響を受けていない業界にも危機回復に向けて貢献できることがあるのである。

 そうして自ら立ち上がった企業がいくつかある。ここではペットケア用品のPETCO社、そして食器用洗剤を主力商品とするパーソナルケア用品のP&G社、Dawnブランドの取り組みを紹介する。