大西 秀樹
埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授

 精神科クリニックを受診してから3週間が経ちました。担当医の指示どおりに薬も飲み、自宅での安静を守っていたためか、夜も眠れるようになり、気持も先週より落ちついています。身体も動くようになってきました。

 新井さんは晴れ晴れとした気分で妻に話しかけます。

「やっといやな気分から回復してきたよ。本当に大変だった。でも、安静にしているのも辛いんだよ。クリニックの先生は『ゆっくり休んでください』なんて言ってたけど、もうこんなに身体が動くから問題ないと思うよ。家にいるとストレスが逆に増えそうだし、試しに一泊二日で温泉旅行に行かないか」
「先生は休んでくださいとの話だったと思うけど、大丈夫かしら」
「それは、調子のよくない人の話じゃないかな。これだけ身体も動くし、眠れるようになったから、もう問題ないと思うよ。それに、動かないと身体がなまって復帰が遅くなると思うんだ。ゆっくりしたいし、一緒に温泉へ行こう」
「それもそうね」

「温泉に行ってもっとゆっくりしよう」

 妻も看病で疲れていたこともあり、夫の提案に賛成しました。そして、自宅から電車とバスを乗り継いで3時間のところにある温泉地へ行くことにしました。初日は温泉でゆっくりと過ごし、翌日は周囲を散策してから帰るという無理のない計画を二人で立てました。