桐生 純子
Feel Communication 代表取締役

 長い年月、育成の現場でコミュニケーショントレーニングにかかわらせていただく中、ここ2~3年で研修に期待することが大きく変化し始めているのを実感します。と言うのも、少しずつではありますが「感じる心を育てる」ことに関心が高まっていると感じるからです。「人の束」で成り立っている企業がそれに気づき、多くの人が「今のままではまずい」と感じ始めている証拠だともいえます。

 今年も、様々な企業の新人研修・教育研修を担当させていただきましたが、その中でも最も印象的だった研修テーマが「感受性豊かな人になるための講座」でした。その企業様との第一回目のお打ち合わせの時のことです。人事担当の方6人がずらりと並び、それぞれが育成現場の現状についてお話をして下さいました。

 その中でも、私の心に残っているのが次の言葉です。

「今まで散々、ロジカルコミュニケーション、ビジネスコミュニケーションの研修をしてきたのですが、どうしても頭の中の問題処理法に終始してしまい、机上のもので終わってしまっていて、現場で活かせていないというのが現状で・・・。実は、そういう自分たちも、研修と言う名のもとに“コミュニケーションに関するものを取り入れる”というだけで、あまり深く考えずに導入していた気がして、『これじゃいかん!もっと日々の現場に必要な根源的なことを考えよう』ということになったんですよ」

あの人から言われたらOKだけど・・・

 私は「凄いことだなぁ」と思いました。なぜなら、組織として今までやってきたことを変えるということは勇気もいるし覚悟もいることです。何よりも“今まで通り”“慣れたやり方”の方が楽だし、効果や変化が組織の中に定着するのにはある程度の時間もかかります。ですが、不具合に気づいた時こそが「その人」「その組織」「その会社」にとって、大きな変化のタイミングなのだと思います。

 スキルを学ぶことが悪いというのではありません。「問題処理能力」や「論理的な思考」は仕事の場においてとても重要なことです。ところが、組織は「こころ」という掴みどころのないものをもった「人間」の集まりです。その中で起こる様々な問題は「理論」だけでは処理できないことの方が多かったりするのです。心のゆとりやお互いの信頼関係が育っていない中では、せっかく高度なスキルを学んでも効果的に使いこなすことが難しく、あちこちで一方通行のコミュニケーションが飛び交うことになりかねないのです。

 なんと残念なことでしょう。そうした心の中の“ざわつき”が個人の集中力を低下させ、組織の人間関係を希薄にし、時には現場の事故につながることになるのです。