細川馨
ビジネスコーチ(株) 代表取締役

 前回は、生き残れないリーダーとはどんな人なのかを明らかにし、生き残る技術を持たないリーダーが職場に与える影響に焦点を当てて解説しました。おさらいになりますが、組織で生き残る技術のないリーダーの特徴とは次の7つです。

  1. ビジョンを持っていない
  2. 自分の言動が他人に自分がどんな影響を与えるかを自覚していない
  3. 事実を見ることができない
  4. 観察する力がない
  5. 自己概念が低い
  6. 人を決めつける
  7. 存在の承認をしない

 今回はこれに基づいたうえで、職場を健康にするリーダーの基本技術についてお話しします。

あるリーダーの話

 生き残る技術のないリーダーとは、どのようなリーダーなのでしょうか。私は次の7つをあるリーダーの話をしたいと思います。彼は優秀な営業マンで、トップの成績を収めて営業所長に抜擢されました。営業所長になった彼は、ますますやる気を出しました。率先垂範で仕事に取り組み、自ら進んで数字を取りに行き、成績の上がらない部下を叱咤激励しました。彼が営業所長になってから1年後、その組織は、前年度予算の140%を達成しました。しかし、彼に依存してばかりいた部下には何の実力もついていませんでした。リーダーにとって、部下はアシスタントでしかなかったからです。そのことに気付かないまま、1年目に良い成績を上げた彼は、組織の人員を増やしました。しかし、やはり部下は成果を上げることができませんでした。リーダーは成果を上げられない部下を見てイライラし、部下の分もカバーしようと、もっともっと働きました。しかし、ついに身体を壊し、入院することになってしまいました。

 退院後、彼は部下に仕事を任せるようになりました。そして、部下たちの強みを見いだすことに力を入れ、その強みを活かしてあげようと考えるようになりました。その結果、部下たちは大きな成果を上げるようになり、そのリーダーはもう1度英雄になったのです。このような話をどこかで聞いたことがあるでしょうか?

 これは何を隠そう、私自身の話です。営業所長に抜擢され、やる気に燃えていた私は、自分で率先して何でもやってしまったのです。しかし、それでは、部下に力がつくはずもありません。ここに、リーダーになりたての人が陥りがちな、大きな罠が隠れています。それは自分をプレーヤーであると、勘違いしてしまうことです。

 皆さんにぜひ認識してほしいことがあります。それは、リーダーの技術は身につけなければいけないものだということです。リーダーになる人というのは、組織の中でそれなりに成果を残して評価をされてきた人であり、評価されてきたからこそリーダーになれたのです。しかし、リーダーになったのならば、それまでの思考を変えていく必要があります。リーダーは部下を支援する人であり、リーダーとしての技術を身につけなければならないのです。そして、リーダーに抜擢されるような優秀な人であれば、その技術を身につけさえすれば、健康な職場を作り出すことができるのです。