鳥居勝幸
サイコム・ブレインズ株式会社代表取締役COO

今の新人にコミュニケーション力がないというのは本当か?

 アンケートなどによると、「いまの新人にはコミュニケーション力が不足している」とする管理職が少なくありません。しかし、新人同士が話している様子からは、これと言って不活発には見えません。新人研修でプレゼンテーションやロールプレイ(顧客役と営業役に分かれて模擬商談をする)を行わせても総じてうまく、昔の新人より余程マシです。いったい、どこがコミュニケーション力不足なのでしょうか。

 でも、頭に「上司・先輩の前では」と付けると合点がいきます。「変に突っ込まれたくない」という意識が、ある種控えめな会話になっている可能性があります。言い換えれば委縮している状態だと考えられます。

 そういったときの新人の発言には、一つの傾向があります。「これは推測ですが...」という前置きがあって、本論を話したあと、「もちろんケースバイケースですが...」という逃げ道を必ず付け加えているのです。そうすると話が長くなる上に、なんだかはっきりしない印象で、何を伝えたいのかわかりません。聞いている上司・先輩は「コミュニケーション力がないなあ」と思ってしまうのです。

新人を甘やかしてはいけないが、委縮させてもいけない

 現在の新人はパソコン・ケータイ文化で育っています。たとえば「こんなの知らない?」と数人の友達にメールすれば、誰かが適切なサイトを教えてくれて「正解」がわかります。何かのテーマを友達と議論するというよりも、サクサクした情報交換と付き合い方を好む傾向が見られます。それは別に悪いことではありません。ただ、他人から指摘されたり、叱られたりした経験は少ないと考えていいでしょう。

 やがて就職の時期が訪れます。彼らは自分にいちいち介入してくる「上司・先輩」という存在に呆然とするのでしょう。それは見たこともない"生物"がいたという感じかもしれません。そして次第に受身になっていきます。「新人のコミュニケーション力が弱い」という現象の裏に、「免疫力が弱いので、なえやすい」という原因があることは見逃せません。

 問題は、育成側としてこの傾向をどう捉えるかです。「甘やかしてはいけない」という人も少なくありません。それはその通りだと思いますが、「萎縮させてはいけない」ということも大事です。その二律背反とも思える課題にどう取り組むか。新人がスクスク育つ環境をどう仕組むか。私たちはそれを考える必要があります。では新人を育成するキーパーソンは誰でしょうか。私は「上司・先輩」、「新人研修の主催者」、「同期」の3者をとくに重要視しています。