細川馨
ビジネスコーチ(株) 代表取締役

 前回は、多くのリーダーが抱える「部下の承認をしない」ことを例に、エグゼクティブ・コーチングの概念についてお話ししました。今回も、実例を挙げてその改善方法を解説しながら、エグゼクティブ・コーチングの手順についてお話ししていきたいと思います。

◆事件簿ファイル2――自分のやり方を押しつける支店長B氏

ある保険会社の支店長B氏はとても優秀で、これまで数々の好成績を残し、40代としては社内で初めて支店長に任命されました。支店長に任命された彼はやる気に燃えました。意気揚々と自ら客先に足を運び、契約を取りつけ、支店は前年比150%の成績を達成しました。

 あるとき、どうしても成績の上がらない部下Y君が相談にきました。

「○○会社は可能性があると思うので、コンタクトを取ってみようと考えています。まずはメールなどで連絡を差し上げてみようと思いますが、どう思われますか?」

 B氏は言います。

「メールなんてとんでもないよ。飛び込み営業が基本だ。営業マンは飛び込み営業ができてなんぼなんだ。私は常にそれで顧客を獲得してきた。メールなどという姑息(こそく)な手段は使わずに、まずは会いに行きなさい」

 B氏の話を聞き、それを実践してみることにしたY君は、翌日、アポを取らずに○○会社に押しかけていきました。しかし、担当者にも会えず、何の話もできずに戻ってきたのでした。

 支店長B氏はY君にアドバイスをする際に、大きなミスをしました。なんだかおわかりになるでしょうか?

○自分のやり方を押しつける

 前回、エグゼクティブ・コーチングで言う「前向きな自己否定」ということをお話ししましたが、めまぐるしいスピードで世の中が変化する中で、従来のやり方がずっと通用するとは限りません。過去の成功はあくまでも過去のものとして考え、変革を続けなければ、自身も組織も生き残れない時代になっています。

 繰り返しになりますが、エグゼクティブの方は優秀な人が多く、これまでに大きな成果を上げて評価されてきたからこそ、今の地位にいます。そこにたどり着くまでには、いろいろな成功体験を積んできたことでしょう。しかし、そのような優秀な人だからこそ、その成功体験を部下に押しつけてしまうことがあるのです。「自分のやり方を押しつける」ということは、エグゼクティブの方が犯しやすい過ちです(私もそのような人を数多く目にしてきました)。しかも、この過ちは自分ではなかなか気づきにくいものです。それを気づかせてくれるのが、エグゼクティブ・コーチングです。

 ここで、エグゼクティブ・コーチングをどのように行うのかについて、少しお話ししたいと思います。